節足雑踏イケタライク

日々思った事や、書籍・映画・その他の感想なんかを呟きます。あまりマジメではございません。

もうやめて!スクルージのライフは0よ!「クリスマス・キャロル」

クリスマス。とんとそう言った催事・祭り事とは縁の無い人生を送ってきましたが……まぁ、ネットの中でくらいそう言う事をキチッと祝っても良かろうと思い、毎週月曜の更新とは別に、クリスマス・スペシャルとして、このような記事を書いております。

 

 

 

あ?今年のリアルクリスマスの用事?

 

ねえよ。普通に仕事だけど?

 

 

 

クリスマス・キャロル

 

 

【あらすじ】

 ケチで冷酷で人間嫌いのがりがり亡霊スクルージ老人は、クリスマス・イブの夜、相棒だった老マーレイの亡霊と対面し、翌日からは第一、第二、第三の幽霊に伴われて知人の家を訪問する。炉辺でクリスマスを祝う、貧しいけれど心暖かい人々や、自分の将来の姿を見せられて、さすがのスクルージも心をいれかえた……。文豪が贈る愛と感動のクリスマス・プレゼント。

 

 

【感想】

オーバーキルが過ぎるわ。

 

 

 

確かにスクルージはケチで冷酷で人間嫌い。他人を突き飛ばして進む事を喜びとするぶつかりおじさん(まぁ比喩だろうとは思うけど)であり、甥にクリスマス・パーティーに誘われても素っ気なく断るノリの悪い男である。

 

 

 

「こんなばかものばかりの世の中にいてさ、クリスマスおめでとうだとよ。クリスマスおめでとうはやめてくれ!お前なんかにとっては、クリスマスはな、金もありはしないのに勘定書きが来る季節じゃないか。帳簿を全部引合わせたところで、十二カ月のどこをどう押しても損ばっかりだということがはっきり分る時じゃないか。俺の思い通りになるんだったら」

 

「俺の思う通りになるんだったら、クリスマスおめでとうなんて寝言を並べるのろまどもは、そいつらの家でこしらえてるプディングの中へ一緒に煮込んで、心臓にひいらぎの枝をぶっとおして、地面の中へ埋めちまいたいよ。ぜひともそうしてやりたいよ」

 

 

 

クリスマスにあまり良い感情を持たない俺も、さすがに言い過ぎじゃね、とは少し思う。なんでちょっと韻踏んでるんだよ。もっとシンプルに「爆発しろ」で良いんですよ。嘘。冗談。最近は彼ら彼女らへの感情が「無」となり、最強伝説黒沢の領域にいますね。カップルはさほど気にならなくなった、と言うヤツ。大丈夫なのかね、これ。だって黒沢の年齢って……(調べる)……まぁ……コメントはしません。そっかぁ、という感じ。

 

 

 

しかしね、そう悪い人とも思えないんですよ。……スクルージさん、少なくとも部下にクリスマス丸ごとの休暇はくれるからね!文句はダラダラ言うし、「次の朝は早く出ろよ!」とも言うけれど。

 

それに「悪事」……はしているかもしれないが、「法律違反」は(多分)していない!寄付を頼みに来た人にもこの断り方。スパッと!

 

 

 

「いや、うっちゃっといてください、ほっといてもらいたいのが希望です。私はクリスマスを祝いはしない。なまけものが浮かれ騒ぐためにびた一文出しはしない。私は監獄や救貧院のために税金を出していますーーその税金だって相当なものになってますよ。暮らせない奴らはそっちへ行けばいいですよ」

 

 

 

……と、このように少なくとも脱税はしていないようだ。それにこの後の言葉こそやや「過激」ではあるが……ここまでの論理なら、よく生活保護や福祉に関する議論なんかで目にするレベルではある。そして叩かれている。だからまぁ……確かにスクルージは「良い人」か「悪い人」の二択なら「悪い人」に分類される人ではあるのだけれど……この後の人格矯正プログラムを、受けなきゃいけないレベルの悪人か、と聞かれるとね……一歩間違えたら洗脳ですから、アレ。

 

 

 

人格矯正プログラム、3人の幽霊。「過去」、「現在」、「未来」の幽霊が、それぞれの冠する名の元に、ふさわしい場面をVR体験させてくるという恐ろしいプロトコル。……SFに出てきたならば「刑罰」として成立すると思うのですが、マーレイ(スクルージの同僚の幽霊)はこれを善意でスクルージに執行する。

 

 

 

まずは「過去」の幽霊だ。これはスクルージが子供の頃、まだ汚れを知らぬ若者だった頃のクリスマスの映像を見せてくる。かつての恋人との別れまでも。ここでスクルージは、自分が「生まれた時から今のような性格だった」訳ではない事を知る。

 

次に「現在」の幽霊だ。これはスクルージの部下や甥がどのようなクリスマスを現在過ごしているかを見せてくる。部下は貧しくはあるけれど、ひとまず今夜は楽しいクリスマスを過ごしているし、甥に至っては家族みんなでリア充を極めている。

 

最後に「未来」の幽霊だ。これが見せてくるのはスクルージの「葬式」である。誰も出席したがらず、遺産として家のカーテンやシャツに至るまで毟られる。スクルージが死んで唯一心を動かされたのは、彼に借金をしている家族だった。

 

 

 

……で、どうなったかと言うと。ちょっとさっきのセリフと比べて欲しいんですけれど。

 

 

 

「わしは羽根のように軽くて、天使のように楽しくて、小学生のように愉快なんだよ。酔っぱらいのように眼がまわったわい。見なさい!クリスマスおめでとう!世界中の皆さん、新年おめでとう!いよう!ほう!いよう!」

 

「この何年もの間、わしが祝ってあげたどのクリスマスよりもめでたいクリスマスだよ、ボブ君(スクルージの部下)!君の給料も引上げるし、君の困っている家族をも援助しようと思っているから、ま、今日の午後にでも、香料入りのホットワインでクリスマスを祝いながら、ゆっくりと相談しようじゃないか。火をおこしなさい。そして仕事にかかる前に、もう一つ石炭入れを買ってくるんだ、ボブ・クラチット!」

 

 

 

……「洗脳」じゃん?もちろんこちらの方が「良い」。幸せになる人の頭数は増えるだろう。具体的にはボブ君とか。ただ……もっと悪い奴も社会にはいる中で、スクルージがこうなって……露悪的な表現にはなるが、本人の意に反して「されて」しまった事については……弱冠のモヤりを感じなくもない。こちらの方が……本人も幸せだろうから、別に「戻せ」とは言わないけれど。良い事だ。良い事だとは、思うのだけれど。

 

 

 

……あくまで個人的な感性ではあるが、このお話からは「スクルージレベルの『悪人』でもやり直せる」という教訓ではなく、「スクルージレベルの『嫌われ者』だとやり直し『させられる』」、そんな教訓を得てしまいそうになった。実際に行なっている行為よりも、周囲からの印象が優先されて罰されているというか……。ここまで嫌われている人なら多少手荒に扱っても文句言われんだろ、的な。

 

 

 

だから……つまりどういう事かといえば。あんまりクリスマス楽しんでる人に文句言って、水指して、嫌われるのは、良くないですよ。回り回って自分に帰り、最悪洗脳されるのです。口だけでも良いので素直に祝いましょう。文句言うのは部屋で1人の時にしよう。この結論はこの結論で嫌われそうだけれど、しゃあない。皆「俺はコイツと違って本心から言ってるぜ!」って言って良いよ。俺もリアルではそうするからさ。

 

 

 

……ところで俺は、なんでめでたい聖夜に、架空のケチなオッサンをやたらとかばっているんでしょうね?これは本心からそう思います。なんでだろう。