節足雑踏イケタライク

日々思った事や、書籍・映画・その他の感想なんかを呟きます。あまりマジメではございません。

俺は「チェンソーマン」を楽しみにして寝たんだ

【9/8 83話を読んだ感想を最後に付け加えました。それに伴い、題名を「じゃあ俺「チェンソーマン」を楽しみにして寝るから」から「俺は「チェンソーマン」を楽しみにして寝たんだ」に変更しました】

 

チェンソーマンという漫画について書くタイミングを逃し続けてきた。

 

このブログが始まったのが2019年11月で、その2ヶ月後に5巻が発売した。

 

 

5巻。いいじゃん。主人公デンジとその仲間の仇であるサムライソードとの戦いに決着のつく巻であり、最強の大会が開かれる巻であり、人気投票で上位のキャラクター、レゼが初登場する巻である。見どころは盛りだくさんだ。

 

ここで5巻までの感想を書いておけばよかったが、それはしなかった。

 

理由は大きく2つあって、1つは見どころが盛りだくさんだったからだ。

 

どの点でまとめたものか、ブログを始めたばかりの自分には判断が難しかった。特に「最強の大会」と「レゼ」を同じ記事でまとめるのに難儀した記憶がある。「最強の大会」は選手2人のそこに至るまでの関係性を考えるに非常に趣深い「論理」の名シーンであり、「レゼ」はすべてのかつて思春期だった者の青春の記憶を捻じ曲げにかかる「感覚」の名キャラクターである。正反対のこれをまとめることに難儀した結果、やらなかったのだろう。

 

あともう1つ、これは本当に反省すべきことなのだけれど、開設当初のこの頃は、「メジャー作品」を取り上げる事についてちょっとした抵抗があったから、「このマンガがすごい!2020 オトコ編第4位」を受賞したこの作品についてもそれが働いてしまった。今はそんな感覚は無いです。全く。

 

当時のこの感覚を「抵抗」と表現するのはちょっと間違っていると思うのだけれど……要するに「俺がやらんでええやろ」という感覚で、すでに話題になっているものをなんだかんだというよりは、俺が新たにトレンドを発見してやるぜ!とそういう意識が当時の俺にあったんだと思います。あほな事に。

 

本当にあほで、開設したばかりのブログに(もちろん現在に至るまで)そんなトレンドを作るだけの影響力はないし、そんなスタンスでやっていたらお前話題にする作品作品に全部「俺はマイナーだとおもうよ」のレッテルを張ることになるんだぞとなってしまうので、当時の俺には猛省を促したいところなのですが。俺のアンテナに引っかかった時点でたぶんどっかしらで話題になってるんだよ。本屋の目立つところで見つけた作品なんだから。

 

ちなみに現状のスタンスはこの記事に詳しいです。記事というか、本というか。

 

 

zattomushi.hatenablog.com

 

ともかくここでタイミングを逃したのを皮切りに、ここまで逃し続けてきた。月曜更新だから書き溜めをして「今週分まだ読んでないけど仕事中に更新だ!えーい!」したらエラいことになりかねないのも大きい。特に世界ハンター編の真っ最中は、その週で注目して熱く語ったキャラクターが死んでたとか全然あり得る。

 

で、今週(2020/8/31 83話)だ。

 

やる気が出たのでやるよ。タイミングとして適切かどうかは知らんけど。主人公デンジの周囲の環境についてまとめていく。話題が飛んだら飛ぶに任せる。ネタバレ注意。配慮はする。単行本(8巻)になっていないところは書かない。

 

 

ドン底期(〜1話)

 

1話、またはその以前の話である。物語のスタート開始時点だ。父親の借金によりヤクザに飼われ、ひとしきりの臓器を売った上でデビルハンターとして働かされていた。

 

悪魔を殺せば大体30万の金が貰える。人外との危険な戦いの報酬としてコレが適正額かどうかがまず怪しいところだが、もちろんここから色々差っ引かれる。

 

今回は「トマトの悪魔」を倒して40万を貰ったが、借金・利子・仲介手数料とその他諸々を差っ引けば7万円。水道代と他の所の借金を返せば1800円になる。社会保険料や年金がない辺りはさすが雇用主がヤクザなだけはある。

 

芸としてタバコを食わされては100円を貰い、「3日は食える」と言うその姿から、日頃の生活が想像できると言うものだろう。描写されてる日だけでも食パン1枚を1日の食事とし、眠る場所は廃屋だ。健康状態も当然よろしくない。深夜に喀血で目を覚ます。そのまま呼ばれて仕事に直行だ。

 

生活環境というのは個々スタートの差が大きく、目指すべきゴールの差も大きく、加えて重視する点も異なる物であるから、簡単に上下を定めることは出来ないが、少なくともデンジのこの段階での生活環境は、多くの人から見て「下」だと言えるだろう。

 

もし「俺の方が下だぞ!」という方がいたら、俺のブログなんか見ている場合ではないので弁護士なり行政なりに相談してください。確かにこのご時世色々と難しいかもしれないが、その状況で「ど素人のブログ読むかぁ!」はあまりにも悪手。多分無意識でヤケになっている。絶対にもっといい手はある。

 

マズローの5段階欲求(最近はケンリックのピラミッドが主流だそうだがそれを知ったのがひとしきり書いた後だったので許してくれ)で言うならば一番下の「生理的欲求」すらも満たされていない。そんな状況から1話でのゴタゴタを経て、次に進む。

 

 

 

就職期(1話〜28話)

 

1話のゴタゴタでデンジは何を失い、何を得たか。

 

それを「現在の状況」を知っている身から語ると非常に混み入った話になるので単純化すると、デンジは人間としての身体を失い、不死身の身体を得て、公安所属となった。

 

公安所属となり得た物の1つは顔の良い上司である。マキマという名のこの女上司は顔が良い。とても。読み返してみれば2話の時点で主人公に安楽死を仄かしてくるような奴ではあるけれども。……俺は今も好きですよ。いや変な意味じゃなくて。普通にキャラとして。

 

公安所属となり得た物の1つは安定した給料である。有給は多く、福利厚生も充実している。先輩の早川アキ宅に住む事になったデンジの毎日は、非常に充実している。

 

食パンには何種類でもジャムを塗ることが出来る。

 

風呂に長く入り、歌う事も出来る。

 

洋式の水洗トイレだって使い放題だ。

 

いずれもアキはすげぇ嫌そうな顔をするけれども。

 

結局のところココの変化が一番大きい。とりあえずは安心して眠れる場所が手に入り、飯も食える。顔の良い女上司も近くにいる。今までの生活からすれば夢のようだ。本人の認識からしても。

 

「ふう…! 俺ぁ今日はじめてウドン食ったぜ…… フランクフルトもな…」

 

「はじめて人並みの扱いされたしはじめてメシ食わせてもらった 俺にとっちゃ夢みたいな生活だ」

 

「俺は軽〜い気持ちでデビルハンターになったけどよぉ この生活続ける為だったら死んでもいいぜ」

*1

 

そんなデンジではあるが、周囲の人と自分を比較して、何かが足りていない事に気づく。低すぎるスタートラインのせいで現状に満足していたが、自分にも何か「目標」のようなものがあった方がいいんじゃないのか?そんな事を考えることが出来る様になったのは、やはり「余裕」が出来たからだろう。

 

考えた末に「短期的な目標」と……少し遅れて「長期的な目標」を見つけ出すのだが、そこは実際読んで欲しい。間に「夢バトル」が入るよ。夢バトルはねえ、本当に良いんですよ。他の人の色んな夢を「偉い」と認めた、その上でどうするのか、という……あそこにパワーの夢も入っているのが良いよね。

 

パワーの話をしなければならない。

 

パワーはそういう名前の同僚である。女だ。血の魔人でもある。自分の血と、少しなら他人の血を操る事ができる。弱くはない。顔も良い。しかし。

 

(パワーは今でもたまに俺を殺そうとするし ナルシストで自己中で虚言癖持ちで差別主義者だろ)

*2

 

そういう事です。もう少し酷い表現もやろうと思えばできる。

 

話数を見て欲しいんですけどね、ある程度長く付き合ってこの表現をされるんだから、出会ったばかりのこの頃は大変です。具体的にいうと、頻繁にデンジを殺そうとする。あと回を進めれば丸くなるのかと言うと、そんな事は全然無い。忘れた頃にやらかす。そこも楽しい。

 

良い先輩であるアキ、良い性格をしているバディのパワーを初めとした人間関係が、この時期のデンジに起きた一番の変化になるのかもしれない。単なる生活環境に留まらない、内面にまで、そして自分以外にまで深く影響を及ぼす、という意味では。生活環境といえばパワーも一緒に住む事になるし。

 

「風呂はたまにしか入らん派じゃ!(パワー)」

「入れ!(アキ)」

「クセえんだよ!!(デンジ)」

 

「トイレ? 糞はたまにしか流さん派じゃ!(パ)」

「流せ!(ア)」

「クセえんだよ!(デ)」

*3

 

……デンジ君は普通に良い子だったんだなぁ。

 

 

進展期(29話~52話)

 

そんなデンジと周囲の環境に、ある大きな変化が訪れる。

 

先輩の先輩。アキのバディである姫野の死である。デンジとも関わりのある女性だった。初めてのキスの相手だった。忘れられない思い出である。

 

死んだのは姫野だけではない。たくさんの人が銃の前に犠牲になった。マキマも撃たれた。無事だったが退職した者もいる。マキマはなんか生きてた。良かったね!

 

悲劇の前に、デンジはさらに力を得る必要に迫られる。アキや姫野のさらに上、岸辺隊長から直々にご指導を受けることになる。パワーと一緒に隊長相手に戦うが、隊長は強い。弱点はアルコールで頭がダメになっているくらいである。それでも努力の末になんとか及第点はもらえた。

 

アキも新たな力を手に入れて、姫野先輩の敵討ちだ。対するは刀の悪魔、サムライソード。変身方法がダサいが全体のデザインはイカしている。それだけに変身方法はもう少しどうにかならなかったのか。手首をキュポッと抜くって。

 

サムライソードとその仲間たちを倒した後に、「最強の大会」は開かれる。最強の大会はイイですよ。世にも爽快なスポーツ対決だ。この大会を経てデンジとアキの相互理解がより深まったように思う。

 

2人とも悪魔との向き合い方や復讐へのスタンスは真逆なんだが。

 

「仲間が死んでどう思った?(岸辺)」

「別に~?(デンジ)」「死んだ!と思った!(パワー)」

 

「敵に復讐したいか?(岸)」

「復讐とか暗くて嫌いだね(デ)」「ワシも!(パ)」

 

「お前達は人と悪魔どっちの味方だ?(岸)」

「俺を面倒みてくれる方(デ)」「勝ってる方(パ)」

*4

 

「俺の家族は全員目の前で悪魔に殺された」

 

「(中略)俺は悪魔をできるだけ苦しむように殺してやりたいぜ」

 

「お前(注・デンジ)は悪魔と仲良しにでもなりたいのか?」

*5

 

「家族を殺した奴も…」「バディを殺した奴もまだ生きてる」

 

「なのになんでやめれるんですか…?」

 

*6

 

この大会以降は互いのその姿勢はそのままに、「こいつの考えはこうで、それは別に悪い事ではない」という具合に落ち着いた、かのように見える。しかしこういうの俺の感覚に過ぎないし、何よりあんまり説明するのも野暮なので、ご自身で彼らの「表情」を見るのが一番です。

 

パワーは雑魚を掃除してたよ。

 

アキとの関係が深まった次は、マキマとの関係が進展する。映画館デートを経て、自分のマキマに対する思いを確かめたデンジ……の前に、ある1人の少女が現れる。

 

その名はレゼ。喫茶店でバイトをする少女である。

 

レゼちゃんは本当に良いキャラクターで……あんまり熱く語ると「臭み」が生じて気持ち悪くなるから最小限にしますが、何が良いって「表情」なんですよね。特にセリフの無い、少ないコマでもその魅力を際立たせてくる。

 

この娘はデンジ君の現在の状況に疑問を投げかける。国民の義務である教育も受けずに国に仕える、その状況は確かに不思議ではある。夜に2人で学校へ行ったり、夏祭りへ行ったりしたその後に、彼女は言う。

 

「いろいろ考えたんだけどさ やっぱり今のデンジ君の状況おかしいよ」

 

「16歳で学校にも行かせないで悪魔と殺し合いさせるなんて 国が許していい事じゃない」

 

「仕事やめて……私と一緒に逃げない?」

*7

 

魅力的な誘いではある。聞けばこのレゼという少女、「絶対に公安に見つからない場所」を知っているという。やがては普通に学校にも通うことができるようになるだろう。だが、デンジは即答出来ずに、悩む。

 

「最近仕事が認められてきてさ… 監視がなくても遠くにいけるようになったし…」

 

「糞みたいな性格んバディの扱い方もだんだんわかってきた …それにイヤ~な先輩ともやっと仲良くなってきたんだ」

 

「仕事の目標みてえなモンも見つけてさ だんだん楽しくなってきてんだ今……」

 

「ここで仕事続けながら レゼと…会うのじゃダメなの?」

*8

 

……これがこの時期の、デンジの周囲の環境を現したセリフになるだろう。「眠れる」「三食食べられる」だけで満足していたかつてとは違う。そこからさらに発展して、「楽しくなってきた」。そしてその楽しさは、少なくともレゼの誘いを断る理由にはなる。

 

……実はこの後もう一段階進んだ……可能性もあったのですが、そこはご自身でご覧ください。デンジとレゼの関係は、52話で終わりを遂げる。この回の題名は、「失恋、花、チェーンソー」。

 

マキマしか知らなかったデンジの前に、現れたレゼという少女。すでに終わったこの関係が、この後のデンジにどのような影響を及ぼすのか……は、実はまだ俺もよく知らない。影響が無い、というわけではないと思うのだけれど。

 

 

 

そして……(53話~70話)

 

マキマとの江ノ島旅行に誘われる早川家(アキ、デンジ、パワー)。……ファンが作った概念じゃなくて、ここでマキマさんが言ってたのか……。

 

だがチェンソーの悪魔となり暴れまわるデンジの姿がTVに放映されたことで、世界中のデビルハンターにデンジが狙われることになる。

 

アメリカからは自分たちを「不死身」と称する三兄弟。

 

ロシアからは無表情な青年トーリカとその師匠。

 

中国からは殴り合いで世界最強の女、クァンシとその女たち。

 

ドイツからは「悪魔を使われたら終わり」の……サンタクロース。

 

彼ら彼女らを皆倒すまで、江ノ島旅行はお預けだ。果たしてデンジたちはこの強敵とどう戦うのか……というのがちょうど8巻最終話(70話)で一区切りする。

 

ここでは詳しく書かないが、この戦い……そして単行本未収録の本誌の範囲でも、デンジの周囲の環境はまた一変することになる。

 

チェンソーマンの魅力である「バトル」については書かなかったことも多いので、まだ読んだことがない人は一度試してみてはいかがだろうか。1話ならジャンプ+で読めたと思う。

 

 

……さて、こうしてデンジやチェンソーマン自体について考える時間を無理やり増やしたうえで……この記事が9/7の0時に更新されるように予約投稿を行い、俺は情報を仕入れないように気を付けながら昼とか夕方にコンビニでジャンプを買う。

 

たぶんそれが一番楽しい読み方ですね。脳への衝撃や感情をセルフで強くすることができるかどうか。これはその実験も兼ねている。興奮して眠れないかもしれないな。安眠グッズでも使うとしよう。

 

 

9/8追記分 83話

といってもそんなには書かないですけれどもね。単行本7巻、8巻に配慮しているのにジャンプの最新話にそれ以上の配慮をしないわけにはいかないでしょう。

 

でもねー……初期の頃にタイミングを逃した自分としては、連載中に書くのであれば、これは最後のチャンスだったかもしれないな、と読んで思いました。たぶんあと3巻分くらいは今週以上の「環境の変化」は起こらないだろうし……その頃に「今だ!」と書くのであればまた3巻分くらい話題になっていて、「俺がやらんでいいやろ」度合が増えちゃうんじゃないかなと。

 

なので個人的にはこの記事はベストなタイミングでかけたなと、それだけは備忘録も兼ねて書いておきます。……3週間後くらいに「全然環境めちゃくちゃ変わったぞ!」となるフラグのような気もするけれども、それもまたオツなものだ。

 

あとパワーの「死んだ!と思った!」の台詞がアキの台詞になっていたのでそこを修正しました。このメンタルだったら色々楽だったけれども、まぁ台無しですよね。

*1: 1巻 第3話

*2: 5巻 第43話

*3: 2巻 第11話

*4: 4巻 第29話

*5: 1巻 第4話

*6: 4巻 30話

*7:5巻 第43話

*8: 6巻 第44話