節足雑踏イケタライク

日々思った事や、書籍・映画・その他の感想なんかを呟きます。あまりマジメではございません。基本的に毎週月曜日更新予定。

ヘブンズ・ドアーを攻略せよ!「岸辺露伴は叫ばない」

(この題名はウソ。彼はこの短編集のどの話でも叫びまくっている。もっとも、コレは彼に限らず、誰であろうと必要があれば叫んでいる)

 

なんか年末に実写化するらしいじゃあないですか。「岸辺露伴は動かない」が。内訳をみると「富豪村」に「くしゃがら」に「D・N・A」……なるほどなるほど。

 

個人的には「ザ・ラン」とか「六壁坂」の怪奇路線(?)をやってほしかったんですが……まぁ明確なハッピーエンドで終わる「D・N・A」を締めに持ってくるのはアリか。「望月家のお月見」とかでもいいんだけど、あの話、露伴先生ほとんど……本編には全く出てこないから……。「世にも奇妙な物語」のタモリポジションだから……。

 

「動かない」としてはそちらの方がセオリーなのかなぁ、という気もするんですがね。記念すべき「懺悔室」なんかを見るに。

 

で、一つ異質に思ったのが真ん中の「くしゃがら」ですね。コレは荒木先生の書いた漫画、「岸辺露伴は動かない」の一つ……じゃあないんですよ。色んな人が書いた、スピンオフ小説の中の一つなんですね。メディアミックスの幅を広げるのであればコレを第一回実写化に持ってくるのはアリ。

 

勿論、「富豪村」もアリ。何でもアリ。

 

 

杜王町在住の人気漫画家・岸辺露伴。面白い漫画を描くためには手段を選ばず、リアリティを追求し続ける男が、偶然かそれとも必然か…運命に導かれるように遭遇する、奇妙な事象の数々とは!?大人気『岸辺露伴は動かない』シリーズ初の短編小説集が、圧倒的なクオリティで登場!!『くしゃがら』『Blackstar.』『血栞塗』『検閲方程式』に、書き下ろし『オカミサマ』を加えた5つのストーリーを収録。(BOOK データベースより)

 

買って読んでそれきりだったので、今日はこれの感想を書いていきましょう。各話でいくぜ。ネタバレ注意。

 

「スピンオフ」に対する俺の考え方はこの記事が詳しいです。別にそんなの知らんでも構へんがな。

 

zattomushi.hatenablog.com

 

 

 

くしゃがら

著者は北國ばらっど。好きなスタンドはチューブラー・ベルズ。実写化する世界おめでとうございます。

 

原因不明の使用禁止用語、「くしゃがら」を知ってしまった漫画家、志士十五と露伴のお話。十五は「どうして『くしゃがら』が使用禁止なのか」を探るうちに、その言葉の持つ魔力に憑りつかれていき……。ミーム系のオブジェクトは厄介ですね。

 

さて「動かない」同様に、露伴を主人公にした物語の厄介なところは、「ヘブンズ・ドアーが強すぎる」というところだ。相手の考えや置かれている状況を即座に認識できる、必要ならば絶対服従の命令を下すこともできる、そんな能力を持っている奴が主人公だと、大抵の状況は解決できる。そんな文字さらさらと書くだけで解決できるようなお話は、そんなに面白くない。

 

「くしゃがら」は至極シンプルな理屈でこの問題に対処する……曰く、「禁止用語なので書き込めない」。記入という行為に対する絶対的な抵抗権こそが「くしゃがら」の本質であり、それが最後のオチにもつながってくるんですね。面白かった。

 

ヘブンズ・ドアーで書き込めないという事は……単なる出版コードの問題ではないですからね。「世界」の規則の問題である。D4Cによる異世界同位体遭遇時の処理だとか……あるいはザ・ワールド・オーバー・ヘヴンの能力であるとか、そういうレベルの問題だ。ほぼどのような方法でも記入できず、それ故に認知されることもまず無いが……仮に「知って」しまった者には、それこそ本編の十五みたいな事が起こってしまうわけです。

 

こうなると「担当編集」が気になりますね。この物語で唯一「くしゃがら」を記入し、また呑まれなかった人間だ。人間だろうか。恐らくは最終フェイズに当たる存在……。十五ももう少しでこうなっていたかもしれない。

 

本筋と無関係のところでは「<地震>や<津波>も駄目か……ちょっと敏感というか、キツ過ぎるんじゃあないの?(p14)」の台詞に、2011年の新章突入第一話で「3月11日に起こった大震災(in仙台)」を持ってきたどこぞの漫画家を思い出し、なんとも言えない気分になりました。いや、俺も地震津波のレベルなら敏感だと思うけどよ……たしか、あの頃まだ半年もたっていなかったよな?

 

……ジョジョリオン、もう10年もやってんの⁉

 

Blackstar.

著者は吉上亮。好きなスタンドはパール・ジャム。味に関しては完全にトニオさんの腕前だよ。

 

都市伝説「スパゲッティ・マン」。その肖像画を依頼された露伴先生……彼がその唯一の「生還者」となる話。

 

「スパゲッティ・マン」のヘブンズ・ドアー対策もまたシンプルで、「近づくとすごく危ない」。射程距離を意識した攻略法はジョジョ本編の王道といえるかもしれませんね。

 

都市伝説としての「スパゲッティ・マン」が語られる場面なんかは緊迫感がありました。そこで考察される無敵とも思える正体の考察が……露伴サイドの攻略法にかかってくる流れなんかも、ジョジョ本編らしさがある。

 

あとはとある財団(Foundation)に勤務する、超常現象対策部門のガブリエラさんね。いやまぁ、普通にSPW財団なんですけれど。字面もアッチと似てるから、ちょっとおもしろくなっちゃった。この世界普通にスタンド以外にも変な連中いるから、その対策班もまた必要なんですね。岩人間とかも対策してくれるんだろうか。無理だよなぁ。所属しているスタンド使いとかも多分いるけれど……なぁ。

 

本筋以外の所では、生還者として研究フォーラムの皆に歓迎されているらしい露伴先生が面白かったです。絶対ネットで匿名のやり取りを教えてはいけないタイプの人種だと思うんだけれどな……顔を合わせなければ、案外オタクと気が合うのかもしれない。

 

血栞塗

著者は宮本深礼。好きなスタンドはリンプ・ビズキット。死体をゾンビにするのは解る。透明なゾンビになるのもまぁ、解る。壁や天井を歩けるようになるのはちょっと解らない。

 

先人がそこで「読むのを辞めた」警告の「赤い栞」と、ぶっきらぼうな図書館司書に露伴が困らされる話。愉快愉快。

 

「赤い栞」は読んだ感じ、見つけようとしていない人が事故で見つける事はほぼ無さそうな感じ。「動かない」の怪異にしては良心的な部類。まぁ、本当に「先人の警告」だったのかはだいぶ怪しいですが。

 

というか、司書のスタンドだろコレ。本にしたアイツの中から干渉出来るのは本人のスタンドくらいだろ。そんなの読んだ「先人」がいる訳ねえだろ。

 

そんな明らかに人間では無い司書も良いキャラをしていました。仕事への態度だけならジョジョ世界の一般人ならあり得るレベルの良い塩梅で。杜王町のモブ、本当に酷いからね。

 

「閲覧」に関しては栞でガードするものの、「記入」に関してはノーガードの漢っぷりも見事。「何を書くのかが気になった」だけで、対策しようと思えば出来たんだろうけれど。

 

「警告」をアッサリと無視する露伴先生が面白かったです。覚えてないかも知れないけどね、貴方3回くらいそれで死んでるのよ。

 

岸辺露伴は警告を無視する」もまた世界の規則なのかもしれませんね。

 

検閲方程式

著者は維羽裕介先生。好きなスタンドはクラフト・ワーク。まともに格好いい顔してるよねアイツ。

 

「別次元に干渉するための方程式」を、倒れた彼女から引き継いで解こうとする男、近森。彼から「快く」彼女の情報を手に入れた露伴が、病院で彼女の記憶を読んでいると……、とそんなお話。

 

あらすじだけ抜き出してしまえはなんだか地味なお話ですが、何故かコンピューターで計算できなかったり、意識して世界を探せば世界中に「ここまでは計算した」という痕跡が残されていたりと、無闇にスケールが大きい。

 

計算者を監視する「何か」の視線。その「何か」のヘヴンズ・ドアー対策は「露伴の身に『効果』が出るまで姿を現さない」というシンプルながらに効果的な物。『効果』が出たら「無意味な数字の羅列」しか書けなくなる上に、すぐに意識を失うという。

 

まぁ最後に考察される「正体」から察するに、ヘヴンズ・ドアーですらもコイツからすれば「低次元」なレベルなんでしょうね。

 

他次元に干渉する方程式である以上、変な連中が好き勝手しないように候補者を「監視」するのはある意味で適正か……。いやでも要求される最低ラインが「技術的特異点超え」ですからね。脳内のイメージはアイツらですよ。

 

……ヤバーイガールズ。

 

「えー! マジ非『技術的特異点超え』!?」

「ヤバーイ」

「非『技術的特異点超え』が許されるのは原始人までだよねー」

「キャハハハハハハ」

 

……この後この娘達ヒドイ事になるんじゃなかったかな?

 

監視者さんも気をつけてね。竿役はたまに物凄いスペックを発揮するぞ。型月の同人誌にたまーーーに「モブ魔法使い」が出るみたいな。実際見た事は無いけれど。

 

オカミサマ

書き下ろし。著者は北國ばらっど。

 

知り合いの税理士から「危険」とされながらも教えてもらった、「支払いの踏み倒し方法」……「オカミサマ」。露伴はそれを試した結果、絶対絶命の危機に陥る……!という話。……この人また警告無視してる……。

 

支払い日の締めに「1円の不足につき1日若返る」、「『破産』時には親族に『取立て』が行く」というレートは露伴の言う通り確かに法外なぼったくり価格ですが、しかし思い返せばセト神ってマジで強力だな。ものの数秒で胎児だからな。しかもスタンドまで弱くするし、記憶も薄れさせる。3部のスタンド、強弱の差が激しすぎるんだよな……。

 

対策としては「めちゃくちゃたくさんいるから個別に対処してもキリが無い」か。キチンと支払わねば根本の解決は望めまい。一応、貯金0で使った場合でも、正攻法での解決策はあるにはあるんですが。露伴、使わなかったけれど。

 

うっかりミラグロマンに取り憑かれた時なんかには使えるかもしれませんね。おう、持ってってくれ!間違いなく「金」ではあるぞ!換金性はゼロだけれど。

 

「税理士」が良いキャラでした。露伴に物申せる強さがしっかりとあって。個人的には実年齢が気になる所……お父さんが「絵画コンクールの賄賂」をオカミサマで立て替えて『破産』したそうなので、確実に親族まで支払いが行っている、とは思うんですが……ある程度現金での支払いを経て、親族にまで行った時には『常識的』な額になっていたのか?

 

それにしても露伴先生。「月の土地」を買う前に、康一君の家を出ろよ。なんだ、終の棲家にでもする気か。そんなに違和感は無いが。

 

 

 

全巻を通した感想とするのなら、露伴先生の「好奇心」については結構各話で解釈に差がありましたね。

 

これ以上踏み入るのは危険と判断し、好奇心を戒めた「くしゃがら」。

 

自分の身に危険が及んだとしても描きたいものを描くと選択した「Blackstar.」。

 

命よりも好奇心を優先する、と断言した「血栞塗」。

 

方程式を解明し、何が起こるかを体験した後ならばその答えを忘れても構わない「検閲方程式」。

 

貴重な体験をドブに捨てるくらいなら、安全策を捨てリスキーな(ややダーティな)手段も使う「オカミサマ」。

 

コレはキャラのブレとかではなく、多数の人間によるメディアミックスの寧ろ「醍醐味」だと思うんですが、どうでしょうね。

 

敢えて共通した答えを定めるのであれば、個人的には言うほど「命」を大切にしていない訳では無い、と思いますよ?だって「Blackstar.」でも「血栞塗」にしても、あれ以上襲われていたら大人しく死んだのかと言えば、そう言う訳では無いでしょう。出来る限りの抵抗はしたはずだ。

 

後はまぁ、仮面ライダーゾルダ(北岡弁護士)の英雄に関するスタンスみたいな。「好奇心よりも命」も「命よりも好奇心」も両方本心としてあって(あるいは両方無くて)気分で使い分けてるんじゃ無いでしょうか。