異修羅2巻の感想だ。1巻感想はコチラ。このラノ受賞おめでとうございます。
今回も前回同様キャラクター(修羅勢)を中心……に、まとめていきます。タイトルの「自然災害」も入れよう。アレはスクロールの下の方に配置して、そのうえでここから先はネタバレ注意。
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あらすじ
圧倒的な力をもつ修羅達により、凄惨な破滅を迎えた新魔王戦争。しかし、世界にはまだ時代を変革しうる逸脱の存在がある。無限に再生し蘇るたび自身の死因を克服するゴーレム、超長距離から放つ矢で地形ごと壊滅させる巨人、巻き込んだ全てを微塵へと変える砂嵐……。能力や種族の頂点を極めた修羅たちと、それを利用すべく謀略を巡らす者達が一点に集う時、宿命と凶兆が交差する殺界が現出する。全員が最強、全員が英雄、一人だけが勇者。“本物”を決める死闘がここにあるーー。(カバー裏より引用)
地平咆、メレ
「目玉を射ち抜いてやるよ」(p268)
「めちゃくちゃ凄い威力でめちゃくちゃ遠くから攻撃できたら強いだろ」というシンプルな強さを持つ巨人。デカい身体でデカい弓を引いて、デカい矢を撃つクソデカアーチャー。
小さな人間を「クソ雑魚」と呼び、その弱さに心底呆れながらも、口調や態度は実に親しげ。地元の人間も気安く接し、同時に確かな尊敬を抱きつつ、彼のおちんちんを持ち上げたりしている。
普段はノンビリと暮らしているのですが、地元……サイン水郷に訪れる危機には実に敏感。世界を滅ぼしかけた「本物の魔王」の軍勢にはその気迫で応じ、さらに毎年の「河川の氾濫」に対しては、その絶技を存分に奮ってみせる。
地元の人、特に子供たちとの関係も実に微笑ましく……え?この人、1巻のアイツらや下にいるヤツらとこれから戦うの?……この人の身に万が一の事があれば、あの、サイン水郷……来年あたり……。
強い。非常に強いのだが、本戦になったら心配な1人。勝つか……負けるにしても、弓を引くのに支障が無いくらいの怪我で……なんとか……!
……後述の「災害」はいかにも恐ろしいけれど、後から考えてみれば読者は2巻の初めに「災害を毎年鎮めてきた」存在が居る事をしっかりと教えられていた、という構造は気付いたらウォーッとなる奴。
黒曜、リナリス
「……ここから始めましょう。我ら黒曜の下に集った瞳。蓋世不抜の英雄達。あなた方の生きるべき時代を、お父さまがお与えになられます。ーーさぁ、名乗りましょう」(p123)
「空気感染する精神支配」が可能な吸血鬼。
……ヴぁんぷ!(成田良悟)にそんな奴いたな。いや、その正体というか、「実態」はアイツとは全然別なのですが。
なかなかタイムリーな強さを持っていますね。手洗い促進キャンペーンをやるなら人選は彼女で決まりだろう。
作中イラストでは姿勢の問題か分かりにくいが、表紙を見るとなかなかのモノをお持ちな美少女だ。キアちゃんもニヒロちゃんもソコはそんなに盛っていなかった。キアちゃんは可変説がある。君はそのままでいい。ニヒロちゃんもな。
そんな彼女のジョブは斥候。率いるは世界最大の諜報組織「黒曜の瞳」!
……「一度でも潜入されれば、潜入したメンバーを見つけて処刑した所でもうどうにも出来ない」という、悪夢めいた組織を、単に「諜報組織」で済ませて良いのかは議論の余地があるけれど。
本体の戦闘能力はほぼ皆無か?
だが彼女の元に辿り着くには、無限の配下と戦わねばならぬ。それも密にならずに!飛沫を避けて!
……どこまでもタイムリーな強さだな。どーにかならんもんですかね、本当。
おぞましきトロア
「ファイマの護槍。音鳴絶。ムスハインの風の魔剣。凶剣セルフェスク」
(中略)
「バージキールの毒と霜の魔剣。瞬雨の針。天劫糾殺。インレーテの安息の鎌」
(中略)
「さあ。どの魔剣が好みだ」(p166−167)
魔剣を使う者の元に訪れる、恐るべき魔剣蒐集者。魔剣に「使われる」事で、その性能をフル活用出来る。
誰もが知る「怪談」の登場人物。星馳せアルスに敗れ、ヒレンジンゲンの光の魔剣を奪われて、とうとう「怪談」は終わりを告げる……。
と思われたのも束の間、ひょっこり生きて現れる。怪談の登場人物が、そう簡単に死ぬわけも無い!
……いやいやバッチリ死んでいた。ここにあるのは“二代目”トロア。父である“先代”トロアの無念を晴らすため、アルスから魔剣を取り戻せ!
……父から「トロア」を受け継ぐ流れはまじめに格好良く、対峙した相手にとってはどこまでも恐ろしい怪異にも等しい存在なのですが、意外とお茶目。
「アルスと戦いたいから軍に志願しよう」
兵1「身元がちゃんとしてない人はちょっと……」
??「軍はそんな自由に誰かと戦えないぞ」
窮地の箱のメステルエクシル
「そして、ぼくはーーははははは! メステルエクシル! か、かあさんの、さいきょうの、こども! こいつらより、つ、つ、つよいんだ!」(p179-180)
まさかニヒロちゃん以上に「戦いたくない」修羅が現れるとは。ゴーレムのメステルに、ホムンクルスのエクシルが搭乗しています。
メステルがあるとエクシルは殺せない。エクシルがいるとメステルは壊れない。メステルとエクシルは同時に戦闘不能に出来ない。
……どないせえと?
オマケに大体どんな武器でも作れたり、自己複製を繰り返して分身したりするからマジでやってられねえ。どうやって倒せばいいんだコイツ。「どんな武器でも作れる」が若干オマケ感あるけれど、これだけでも充分強力ですからね?
マシンガンとかナパームとか、やらなかったけど毒ガスとか非人道兵器とか、嘘喰いの警視庁密葬課が帝都タワーで使ってたアレとか作れる。コレは作った。殺傷能力マシマシで作れる。
作者……母親である、「軸のキヤズナ」さんもいいキャラで掛け合いが楽しい。貴重なイケBBAですよ。俺の中のイメージは完全にDr.くれは(ワンピース)ですね。
ものすごく「行っといで バカ息子……」しそう。包丁持って追いかける下りもやるでしょう。「湿っぽいのは嫌いでね」も、やるでしょう!
メステルエクシル、包丁程度ではどーにもならねー事には今気づきました。まぁお母さんに追いかけられたら、かなりショックは受けると思うが。お母さん大好きっ子だからね。仲良し親子。良い事だ。
微塵嵐
今回、修羅たちの前に立ちはだかる「自然災害」。岩や砂、砂利が巻き上げられた超巨大な砂嵐。巻き込まれた地形や集落、生物を無差別に砂塵のヤスリにかけ、「粉微塵」に変えてしまう。
ヤマガ大漠に於いてはある種の「神」の様な扱いを受けている。あらゆる存在を無慈悲に削り取り、微塵に変えるその威容は確かに神格化されるのも頷ける。
だがコレは間違いなく災害だ。オマケにどうやらヤマガ大漠を離れ、大都市である黄都に向かってきている様で……。
……ただの「僻地の異常気象」では終わらない。難攻不落の論理を持つゴーレム/ホムンクルスに、キヤズナはとある「昔話」を聞かせる。
「こいつだけじゃない。ずっと昔はお前の兄貴どもが何千といた。ヤマガ大漠を挟んで、イターキの反対側にな。アタシも国を持ってたんだよ。機魔の国だ」
「そ、そうなんだ!にいさん!かあさんの、くに!すごいな!」
「ーーヘッ。凄いだろう。だがアタシの国は滅茶苦茶にされて、お前の兄貴どもも皆殺しにされた。“微塵嵐”の野郎が……あのクソが、砂漠から出てきやがったんだ。それまでそんな素振りは全然見せなかったのに、アタシの国を潰す時だけは動いてきやがった。黄都に向かっているのだってそうなんだろうさーー人の国が力を持つと、“微塵嵐”の野郎が潰しに来やがる。アタシの知る限り、最低の腐れ災害だ」(p230)
様々な思惑や因縁を巻き込みながら、その悉くを微塵へと化す“微塵嵐”。この災害に、果たして修羅たちはどう挑むのか……。
「“微塵嵐”の野郎が……あのクソが、砂漠から出てきやがったんだ。」
……「野郎」?「出てきやがった」?
微塵嵐、アトラゼク
「この世の全ては力なき微塵だ。ただ、風の模様で儂の無聊を慰める微塵でしかない」(p249)
そんなわけで災害の名はアトラゼク。正体は超巨大なワームでした。全身の「骨伝導詩術」により維持され続ける「微塵嵐」はまさに攻防一体。防御面に関して言えば、素の「硬さ」は相当なモノ。
複数の修羅を一度に相手取るその実力は確かに災害級。だが昔のエラい人は言いました。「データが有れば殺せる」と……!命なき災害としての頃の方が、「恐ろしさ」はあったか?
ヤバくなったら即座に「逃げ」の選択が出来たり、そもそも日頃の所業からして、良い意味で小物な精神の持ち主。理想的な劇場版ボス、と言った趣。倒せ!海賊ギャンザック!
……自分以外を「微塵」と呼んで気にもしない彼(で良いのかな?)の最終的な敗因が、マジで微塵だったの、好き。
絶対なるロスクレイ
「皆様の目の当たりにしたこの戦いこそが、我が真業。来る大試合において、私が修めたこの絶技の全てで敵を討ち果たすことを誓いましょう!」(p335)
すごく立派なイケメン騎士。
異常な数のファンを持ち、観客や審判団の多くが「ロスクレイが勝って欲しい」、「ロスクレイが勝つのが1番穏当だろう」と考えている。ので、大会をやる上でものすごく有利に立ち回れる。
そんな「強さ」があっていいのか!
良いんだよ。一定のラインを超えた強さ議論は、常に「人気投票」と紙一重。ならば「凄い人気者」は、最強と称されるにふさわしい能力だ。
そう納得はするけれど、それにしても、いけすかねえイケメンだ。まぁそれなりにはちゃんと強いみたいだけどさぁ、もっとヤベー実力者いっぱいいるから、本戦ではアッサリ負けちゃうんじゃねーのー?
……そう思っていると、最後の方でアッサリ印象をひっくり返される事になるのですが。
金とコネで自分に有利な環境を作り上げ、なんとか実力で勝利せよ!「彼女」のためにも!
冬のルクノカ
「ご存知の通り、私が冬のルクノカですよ。ええ。歓迎いたします……といっても、この不毛の地では、もてなしもできないのですが。ウッフフ!」(p374)
ドラゴン。すげー強い。
まぁ正直今回の話だけだとその「強さ」は……具体的には……よく解らない……のですが、擁立者があのハルゲントという時点で、何らかのトラブルの種になるのは目に見えている。
というか構文で。修羅全員を客観視しているはずの構文で。その。「真の最強」とか言われているんですが。なんて奴を連れてきたんだハルゲント。
……ああ違うんですよアルスさん、コレは「ハルゲントさんはこんな規格外のドラゴンを大会に呼ぶ事が出来て凄いなぁ」という意味でして。けして馬鹿にしているわけでは。はい。
見た目と人格の乖離具合が素敵。白くて幻想的なドラゴンの見た目から繰り出される、優しいおばあちゃんボイス。キヤズナさんとは別ベクトルのイケBBA。もう少しジェントリな方面。女性(だよね?)につかうのは微妙な表現だが。
戒心のクウロ
「ーーこれでいい」(p288)
……「修羅テンプレ構文」順で言うならロスクレイの前なんだけど、ちょっとここに置かせてくださいな。(以下本編読了後反転推奨)
いやぁ、俺はね、見ちゃったんですよ、Web版異修羅の目次。チラッと。この辺りの事はこちらに書きましたが。
だからまぁ、シャルクが修羅かどうか心配している、みたいなくだりは、実の所茶番なんですよ。確かに1巻の感想書いた時点ではマジで不安で5回くらい探したがね。まとめ記事の時点では、もう、本戦出場者全ての名前を、しっかりと把握しているんです。
いたんです。
……まさか「追加」されるとは思わねーじゃん?「既に活躍が決まっているキャラの出番を減らす」のはトラブルの素だろうが、増やす分には何の問題も無い!理屈の上ではわかるけれども。
元「黒曜」メンバーの諜報員。ホムンクルスである彷いのキュネーと行動を共にする。彼が持つ常識の埒外の「感覚」は、果たしてどこまで彼の生存を保証するのか。そして、物語の開始時点ではその武器を失いつつあった彼が、改めて「修羅」となり得るとするならば……。
……もう田舎の方でキュネーちゃんと幸せに暮らせよ!
とは思いますが。黒曜にドップリと浸かった上で「あんなジョブ」では。それも難しいんでしょうなぁ。
誰にも予想ができない「書籍追加修羅(本戦出場)」。
今後の活躍は、誰も知らない。
……こんなところか。
1巻を「A vs B」!「C vs D」!の連続とすると、今回は色々戦いながらも最終的には「 vsアトラゼク」!に集約するので、そこはちょっと好みが分かれるかもしれませんね。
それにしても軸のキヤズナさんが良いキャラだぜ。
破城のギルネスさん、ロスクレイが相手で良かった。あのままだとキヤズナさんとトロアが両方来る可能性、全然あったので。楽には死ねないぜ。