節足雑踏イケタライク

日々思った事や、書籍・映画・その他の感想なんかを呟きます。あまりマジメではございません。

オベロン!「夏の夜の夢」、読んだよ!

異種族相手も視野に入れた寝取らせはちょっとレベルが高すぎると思う!(言った瞬間に殴られる感想の例、しかし読んだことを表明した瞬間恐らく嫌な顔はされるのでまぁ誤差だろうよ)

 

台本形式の本を読むのは初めて……ではないか。台本「形式」であるならば、それこそネットでSS漁っていた時期にいくらかというか、いくらでも読んだわ。キョン!AVを撮るわよ!

 

……涼宮ハルヒの憂鬱、読んだことないなぁ……。

 

俺に「ライトノベル」を読ませる原因となった人物が好きで、借りようと思えば借りられたんですが、彼は何分熱心な涼宮ハルヒの憂鬱好きなので、彼から借りた以上は彼に感想を伝えなくてはならず、そうなると解釈違いを起こした時のリスクがアレで……結果「とある魔術の禁書目録」を借りるにとどまったのでしたか。前方のヴェントまでは覚えている。なんか今創約らしいですね。新約はもう終わったのか?

 

……みんな元気にしてるだろうか。閑話休題

 

ともかく、元が劇の台本であるものを書籍として読むのは初めての事である。最初はなかなか慣れなかった(後から知ったのだが、この「夏の夜の夢」は「ちょっとしか出ない登場人物」が数多く登場するなかなか難しい劇だったのも影響しているだろう)のだが、後半はノリをつかめたのかそこそこのスピードで進むことができた。しかしその上でところどころ「?」な部分もあり、色々調べましたとさ。なので他の人の感想や知識に、多少影響を受けているかもしれぬ。まぁ当時の風俗や歴史関係についてはどうしてもな。

 

 

妖精の王とその后の喧嘩に巻き込まれ、さらに茶目な小妖精パックが惚れ草を誤用したために、思いがけない食い違いの生じた恋人たち。妖精と人間が展開する詩情豊かな幻想喜劇『夏の夜の夢』。ほかに、奸悪な弟に領地を奪われ、娘ミランダと共に絶海の孤島に漂着したミラノ公プロスペローは魔法の力を究め弟の船を難破させたが……シェイクスピア最後の傑作『あらし』を収める。

(カバー裏より引用)

 

大まかな話の筋はFGO2部6章でオベロンから聞きまして、その際は「ああ惚れ薬系のアンジャッシュね、なんか漫画で読んだことあるネタだわ」みたいな感じだったんですが、冷静に考えてみれば俺が漫画で読んだことある惚れ薬系のネタはなんだ、周囲の異性を無差別にひきつけモテモテになる系の話でした。吸血鬼すぐ死ぬのアニメ化した話にもありましたねそんな話。デカい金玉のヤツ。ニコニコで見てたらコメント欄が「ごめん(^^;」で埋まりましたわ。みんな好きだね日本生類総研。飲んだ人が初めて見た相手に惚れる感じのは、あんまり見ないか……?まぁ勿論具体例はあるんでしょうが、たぶんそういう漫画の具体例でも目当ての相手に思い通りに惚れさせるようなのは少数派だろうね。

 

ていうか「目当ての相手に思い通りに惚れさせる」だとか、この「夏の夜の夢」でもそうなんですが、既に好きな相手が居る人間に対して、しかし薬を盛る事でその相手とは別の人間に好意を抱かせる、というのを話の軸にしてしまうと、お話のジャンルがエロ同人になってしまうのよな。催眠アプリ系の……。

 

夏の世の夢は断じて催眠アプリ系のエロ同人ではないが、しかしそれは惚れ薬によって好意を抱かれたヘレナちゃんが「なんでお前ら急にそんな態度が変わるんや!おかしいやろ!」と、まぁ至極当然ではあれどしかしモラルに溢れた反応を返してくれたからであって、一歩間違えればヘレナちゃん主人公の逆ハー物になっていた。危なかった。

 

ただヘレナちゃんが「お前らの態度はおかしい!」というのもちょっと引っかかる部分があるにはある。

 

確かに、間違って薬を盛られたライサンダー(FGO2部6章で名無しの森にて記憶を失ったぐだ達が名乗る名前はここに由来するらしい。ぐだ男はライサンダー、ぐだ子はハーミア。どうでもいいけどライサンダーって名前は、めっちゃ雷属性感がありますね)は今まで熱を上げていた恋人のハーミアに「ハーミア、二度とライサンダーのそばに来るのじゃない(P51)」とか言い出しながらもヘレナちゃんに愛をささやき、また少し遅れて薬を盛られた本来のターゲット、デメトリアスも今までの冷たい態度からはうってかわって、「おお、ヘレナ、女神、森の精、全きもの、聖なるもの!(P72)」と言い出す、その彼らの転換は確かに異常である。

 

しかし、感情の流れ以外、熱意の部分に関してはヘレナちゃんも大概だったぞ。

 

ライサンダー(服薬中)

「(跳び起きて)嘘は言わない、火のなかにだって、とびこんで見せる、かわいいきみのためなら。透きとおるように美しいヘレナ!まさに自然の現ずる摩訶不思議、その胸をとおして、きみの心が見える、手にとるようにまざまざと。デメトリアスはどこへ行ったのだ?ああ、口にするのも忌まわしい、この刃にかかってくたばってしまうがいい!(P50)」

 

デメトリアス(服薬中)

「(目を醒し)おお、ヘレナ、女神、森の精、全きもの、聖なるもの!その目を何にたとえよう?水晶もまだ濁っている。おお、その脣、熟れ切って、互いに肌を触れ合う二つ部の桜桃、いかにも人の心を誘うような!そして、その手、あのトーラスの高嶺の雪も、東風に吹かれて硬く凍った白銀の清さも、その手を高くさしのべれば、たちまち変じて烏の黒羽色と化そう。おお、せめて口づけを、その白い手に、このうえなき浄福の宮居に!(P72)」

 

ヘレナ

(デメトリアスに『愛してもいないし、愛することもできない』と言われて)「そう、だから、いっそう好きになるの。デメトリアス、あたしはあなたのスパニエル犬、ぶたれればぶたれるほど、尾をふってまつわりつくの。ええ、あなたのスパニエルにしていただくわ。蹴ってちょうだい、ぶってちょうだい、知らん顔をしようと、忘れてしまおうと構わない。ただ、許していただきたいの、なんの値打ちもない女だけれど、せめておそばにだけは居させて。あなたのお心のうちに、それより小さな場所を求めることが出来るかしら?——あたしには、それだけで、もう充分立派な地位だけれど――飼犬なみに扱ってくれと言っているのだから(P39)」

 

……お前ひとりだけ素面でコレだし、なんか性癖が滲み出てるんだよな。

 

ちなみにこれを言われたデメトリアスの反応は「君を真底から嫌いになるような事を言わないでくれ」だったよ。そんな反応をしている奴がいきなり「(目を醒し)おお、ヘレナ、女神、森の精、全きもの、聖なるもの!その目を何にたとえよう?水晶もまだ濁っている。おお、その脣、熟れ切って、互いに肌を触れ合う二つ部の桜桃、いかにも人の心を誘うような!そして、その手、あのトーラスの高嶺の雪も、東風に吹かれて硬く凍った白銀の清さも、その手を高くさしのべれば、たちまち変じて烏の黒羽色と化そう。おお、せめて口づけを、その白い手に、このうえなき浄福の宮居に!(P72)」と言ってくれば、そりゃあ若干Mの気があるヘレナちゃんも警戒するのであるなぁ。

 

いや、「芝居」というメディアの都合上、という事は解るんですが、しかしマジ物の「芝居かかった」セリフを初めて聞くとその迫力にビビりますね。よく中二的なオリジナル一次創作に対し、「セリフが不自然に芝居かかっている」というディスをする人がいますが、マジに芝居かかっているものが書けるならそれは間違いなく才能なのであるなぁ。……ああ、そういうマジに芝居かかっているものは、「不自然」ではないからいいのか。納得。

 

ここまでヘレナちゃんと薬漬けの男二名について触れてきたなら、ハーミアちゃんについても触れねばならぬ。ハーミアちゃんはライサンダーとラブラブだし、しかしそんな一方で父親はデメトリアスと婚約させようとするしデメトリアス本人も割と乗り気な、ラブコメ主人公のような立場にいたのだが、なんか目を離したすきにライサンダーとデメトリアスはヘレナちゃんにメロメロになっていたので良く解らんことになってしまった可哀そうな娘だ。

 

ライサンダー

「(中略)君が好きなのはハーミアのはず。それを、僕は知っている、ということを、君は知っている。だから、ここで、心の底から喜んで、ハーミアの恋人役は君に譲る、そのかわり、ヘレナのお相手役は僕に譲り渡してもらいたい……僕はヘレナを愛している、死ぬまで愛しつづけるだろう(P73)」

 

デメトリアス

ライサンダー、いいのだ、ハーミアは君が取っておけ。僕は要らない。それは、前は想っていたかもしれないが、その想いも、もう消えてしまった。僕の心にとって、ハーミアは、いわば旅人の求める仮の宿。今は、ヘレナのうちに故郷を見いだし、そこを永住の地と思っているのだ(P73‐74)」

 

男2人はこういう感じだし。言い方ァ!

 

言い争いの最中もずっとハーミアちゃんは可哀想で、ヘレナちゃんにも「お前がこんな悪趣味な悪戯を!」みたいな感じで責められて、「いや知らん!知らん!」と困惑する……実際なんも知らんのでしょうがない……のですが、そんな言われっぱなしのハーミアちゃんが、惚れ薬とか男2名とはあんまり関係ないところで地雷を踏まれて結構ガチ目にキレる下りは割とコント味があって好きでした。喜劇ってコントなんだな。まぁ言われてみればそれはそうか。吉本新喜劇とかいうものね。シェイクスピアはめちゃくちゃ嫌な顔をしそうだが、まぁ催眠スマホのエロ同人とか言っちゃった時点で嫌な顔はされるので、もうしょうがない。

 

ところで俺はオベロンがたまーにエモい感じで口にする嫁さん、ティターニアについて知りたくてこの本を読んだのだが、ティターニアの出番は想定したよりもだいぶ少なかった。知らん間に薬を盛られ、知らん間にロバの頭になっていた三文役者に惚れこんで、知らん間にインド人の小姓をオベロンに取られたら、オベロンによって案外アッサリと薬の効果は切らされて、なんか知らん間に仲直りした。俺は上で寝取らせとか書いたけれども、ティターニアに惚れ薬を盛ったのは本当に「正常な判断力を奪いたかった」だけらしく、お前絶対にもっと他のやり方あっただろ……とはどうしても思ってしまう。

 

このオチに関する「なんだかな感」は例の人間4人組にも言えて、彼らのオチは眠らされた後になんとなく薬の効果が切れた結果なんとなく仲直りして、ハーミアとライサンダー、そしてヘレナとデメトリアスが二組揃って婚約し、親戚みんなで下手な劇を見て終わる、というモノで、お前アレだけ拗れた口論、挙句の果てにはライサンダーとデメトリアスの決闘にまで発展したソレがそんなに丸く収まるかよとは思うけれど、こういった「なんだかな感」は全て結びの言葉でうまく回収されてしまうので、シェイクスピアの掌の上感はある。

 

なので逆に考えてみよう。

 

妖精の些細な思いつきが原因で、撒くに撒かれた悲劇の種が、「コレ絶対いつか大変な事になるだろう」といった予想の数々が、ことごとく実際その通りになり、「夏の夜の夢」なんて言葉でごまかしようもない、特大の悲劇になってしまう物語。そんなものがあったとしたら、それはどんなお話であろうか?

 

 

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……2部6章、アヴァロン・ル・フェの黒幕に、やはり彼は相応しいことだなぁ。