節足雑踏イケタライク

日々思った事や、書籍・映画・その他の感想なんかを呟きます。あまりマジメではございません。

さわやかなヤツでした……原作とは全然違うのに奇妙なんですけれど……「嘘喰い(実写映画)」

というわけで行ってきました。嘘喰い(実写映画)!

 

もともと號奪戦が見れるなら見に行こうとは思っていたのですが、メインになるのが「廃坑のテロリスト」だというのならば、まぁそれなり以上の確率で見れるだろうと、あんまりネタバレなど踏まないうちに見に行きました。……いや、原作者さんのコメントとかはさすがにチラ見えしたが。

 

というわけでネタバレ注意でやっていきます。公開中の映画なので反転多めで。あと原作についてのネタバレもあるぞ。

 

 

 

あらすじ

嘘を見破れなければ、即死──。天才ギャンブラー“嘘喰い”こと斑目貘が、日本の政財界そして裏社会をも支配する会員制の闇ギャンブル倶楽部“賭郎”に挑む。待ち受けるのは、賭郎の会員権を所有する一流の権力者にして欲望にまみれた凶悪なイカサマ師たち。嘘 vs 嘘。イカサマも、殺し合いも、なんでもありの≪超危険なデス・ゲーム≫に没入せよ。

(公式サイト introductionから引用)

 

 

 

とりあえず見終わった後の第一印象が記事タイトルの如く「爽やか」だったので、悪い映画では無かったのでは。所々原作より好きな部分はあったし。

 

「號奪戦は見れたの?」と聞かれたら「見れた……っちゃあ、まぁ見れた……?」という答えになりますが、なんで気持ちよく「見れたよ!」と即答出来ないのかはご自身でお確かめください。


いわゆる「揶揄されがちな邦画実写版ポイント」は点在し、特に「めちゃくちゃチョロく都合の良いヒロイン」になってしまった鞍馬蘭子はかなり好みの分かれるキャラクターだろうけれども、個人的にはアレはアレで……。いかにも「極道の女」然とした、危険性と色香に溢れる原作蘭子よりも、親しみやすさというか、可愛らしさに特化した感じは、少なくとも役者さんの雰囲気には合っていたと思う。真面目な話、原作の方向性だとレーティング上がりかねないしな。


でもアレだけ甘いと「雄牛の子宮編」における立会人としてはちょっと不安が残りますね……。というか全体的に原作よりキャラクターが若い(あえて言えば『未熟』な)感じが。嘘喰いのハングマン途中の焦燥とかもどこまで演技かこちらには見切れない部分も多く……というかアレは多分素だったのでは。


アレを演技とするなら、あの慌てようのままで「時間制限つけるならこのゲームは最初から仕切り直しでしょ」とか言い出すクソ言い訳(原作再現)をスムーズに決められるので……。


ただ、あの「恐らくは素の慌てよう」からの「気づいてることを気づかせる」かのような様な仕草……「上か下か」みたいな余裕(?)を持っての検証により人間味はむしろ原作より増し、「得体の知れない存在による弱いものいじめ感」が薄れ、それが「爽やかさ」に繋がった……?……のでは無いかという気もするので、個人的にはそんなに気にならなかったというか、「原作とは別なのだ」というのを念頭に置いた上で、「これはこれでアリ」でしたね。


気づいてることを気づかせる」とかは、原作貘さんだとやらないからね……じゃんけんとかの素の運試しは弱いので、相手がイカサマを捨てて単純な運ゲー勝負を仕掛けてくると分が悪い…………「上か下か」、めちゃくちゃ際どかったな……そういえば「ウィーンじゃんけん」もなかったようだし(ルール説明のあたりで一回トイレに行ったので見逃したかも)……パッと見で「卑怯な小物」に見える仕草は極力控えているのか?


つまり「迷宮のミノタウルス」がこの姿勢のまま実写化される際は、賭廊の黒服さんに洋服借りる下りとかも無いという事だ……貘さん、ちょくちょくクソみてぇな言い訳をかますので……。好きなんですけどね……立会人に「駄目に決まってんだろ」と冷たい反応を返されるの込みで……。そんな反応が計算の内だったりするの込みで……。


ただ、これも「爽やかさ」を出すのに繋がっていたような気もするので、俺はこれも好きでしたよ。


そしてこの独特の「爽やかさ」の最大の要因はなんと言っても佐田国!


「日本で革命を起こそうとするテロリスト」という原作の設定は欠片も残さず改変!「自身が開発したメタンハイドレートの発掘技術による世界平和を夢見ていた科学者」という180°正反対の設定に!


……まぁ過去形ですのでね?色々あってやる事はそんなに変わらなくなってしもうたのですが。


原作佐田国が東京で何をやらかそうとしていたのかを考えると、あのお中元爆弾の見方も変わってくるだろうか。次元を超えた因果応報は、もはや単なる理不尽だ。うん、やっぱり見方変わんねえや。なんなんでしょうね、あの妙に手が込んでいる割に偽装としては難のあるお中元爆弾


ともかくそんなかつての佐田国の目的が「世界平和」だというのは、これは原作読者からすれば「おっ」となる要素であり、そして実際かなり良い感じに「おっ」とさせてくれる。


佐田国の最後、末路自体は原作と変わらない……のだけれど、しかしそこに至るまでの道中……最後のほんの数歩には、まさに天と地ほどの差があり、これはこれで好きというか、正史は原作、とした上で、実写版の方が好みでしたね。


まぁ原作の佐田国の末路もだいぶ好きなので……末路の好みの度合いとしては、佐田国(実写版)>>佐田国(原作)>目蒲(原作)>実写版オリジナルキャラ>>目蒲(実写版)という具合になり、足して割るとまぁトントンかな、という感じでしたが。……実写版の目蒲、アレ、死んだよね?どうせ首コキャするならマス鬼獣院さんレベルに……。


爽やかさといえば、廃ビル脱出勝負!


マルコ(ロデム)加入のためのこの勝負は、原作では「深夜の廃ビル」だったロケーションが「昼間のちょっとした森林」に変更され、ここでも恐らくは意図したものではない爽やかさが出ておった。


ロデムが待機しているのが「デカめの樹」とか、なんか別のジャンルでありそうですもんね。夏休みに子供が森深くにあるあの樹で謎の野性的な青年「ロデム」と出会い……みたいな、カッパのクウと夏休み的なノリの映画で。まぁこの映画は嘘喰いなのだが。多分子供があの時期のロデムに会ったらレーティングが上がってしまうが。


ロデムの強さはちょっと実写で再現しようとするとグロ描写制限がキツくなってしまうな、というのはちょっと思いましたね。これは脱出勝負全般に言えるが。ワイヤートラップに引っ掛かった人とか、原作ではもっと露骨に切断されてたからな……。


あとカール・ベルモント周りや伽羅周りがオミットされた影響(これ自体はやるとどうしても30分〜1時間くらい伸びるのでしゃあないと思う)で、せっかく仲間にしたマルコの活躍が少なめだったのも少し寂しいか。まぁ続編で迷宮のミノタウルスとかやるならそこでですね……。


そういう意味での原作再現、という視点では亜面立会人の再現度が非常に高かったです。髭の毛量がちょうど良い感じでな……。出番はちょっとしかありませんでしたが。


他にも貘さんの体力に上方修正が掛かっていたり、あの序盤の漁師町で世話してくれた人誰なんだよ、とか、語るべき場面は色々ありますが、総評としては、面白かったです。少なくとも、個人的に設定したハードルは全然超えてた。


佐田国の背後にいた、イカサマのアレとか担当していたあの人達(恐らくは原作のイデアルに相当?)とか、実写版最終盤のアレとか、まだまだ続編を作れそうな部分もありましたし、今後に期待していきたいですね。

 

あとスタッフロールに「感染対策アドバイザー」みたいな人がいて、今映画撮るときはそうなるのか、と、思いました。まぁ必要だわな。


あのリモート会議とかそういう必要があったのか。そうか。そうなのか?

 

 

 

ここまで書いて「さて他の人の感想見てみるかー……あー、まぁこんな感じかー……」という感じで色々見ていたら、ハーモニカ事件について知りました。爆笑した。爆笑出来てよかった。

 

ありがとう、横浜流星さん。俺はチョロいのでな……高橋一生の岸部露伴しかり、そういう「こだわり」を知ると好感度が上がってしまうのさ。