節足雑踏イケタライク

日々思った事や、書籍・映画・その他の感想なんかを呟きます。あまりマジメではございません。

#成田作品ワンドロ 技術満載サイボーグ進化サメ VS 褐色腹筋善良寄り女テロリスト ! 「炬島のパンドラシャーク」

 

勝手に戦え!

(映画 エイリアンVSアバター 日本版DVDキャッチコピー)

 

そんなこと言わずに見てくれよ。この二人の戦いを。楽しいから。

 

 

成田良悟の著作、「炬島のパンドラシャーク」は上下巻構成の単行本である。他シリーズとの関りも薄く、氏の作品を初めて読む、という方にも勧めやすい作品だ。

 

そんな作品の魅力は色々あるのだが、やはりアクション的な見せ場として、この二人……一人と一匹……あー、でも二人で良いか……記事タイトルのコンビによる「対決」を、外すことは出来ないだろう。

 

技術満載サイボーグ進化サメ

VS

褐色腹筋善良寄り女テロリスト

 

 

あー……良い。字面が良い。B級味が溢れている。溢れすぎている。机と椅子と床がびっちゃびちゃ。こういう表現を指して「B級」と言ってしまうのは簡単だけれども、いつでも誉め言葉だと解釈してもらえるとは限らないから難しい。『俺はA級を目指してるんだ』と言われてしまってはどうしようもない。

 

ただこの作品は下巻のカバー裏ででしっかり「成田良悟が放つ究極の“B級サメ小説”」と言われているので、なんの躊躇いもなくB級だと表現しますけれども。あゝ間違いなくB級だとも。間違いなく成田良悟が放つ究極の“B級サメ小説”だとも!

 

そんなわけでそんなB級感あふれる二人について語っていきます。

 

 

 

技術満載サイボーグ進化サメ カナデ

生存せよ。
  捕食せよ。
    進化せよ。
何者にも追いつけぬ速さで、いつか大海原の彼方へと泳ぎ着く為に。
己の正体が災厄か希望か、その答えを届ける為に。

(炬島のパンドラシャーク(下) P1)

 

かつて発生した未曾有の獣害……248名の犠牲者を出した人喰い鮫、ヴォイド。そんなヴォイドの亡骸から発見された「子供」……その「子供」に、狂気の天才、紅矢倉博士がなんやかんや色々したのが技術満載サイボーグ進化サメ……個体名を「カナデ」という。マジでなんやかんや色々しています。

 

サメとは思えないほどの思考回路と、サイボーグとして埋め込まれた機械の数々、そして「進化」していくその肉体……まぁ上巻で明かされる装備としてわかりやすいところで、「電撃飛沫」とかが解りやすいか。

 

帯電した水飛沫を相手に浴びせかけて大ダメージ+スタンを喰らわすという解りやすく恐ろしい技だ。移動に付随する形で特にタメや予備動作なく出すことが出来るので、基本的には出し得なのが良い。もちろん水場でしか使えない技ではあるが、サメなので基本的には水場での戦闘に……。

 

……とはあまり最近のサメの場合は限らないか。

 

まぁこんなのは割と序の口で、もっととんでもない進化をどんどんと遂げていくこととなる。最終形態とかねぇ、お前はもはやサメなのかといいたくなるような変化をするのですが……それでもしっかりサメなのです。そう、そこにそんなに意味はないので、だから……これはぜひ「決着」を読んでいただきたいところ。

 

さて未曾有の獣害をもたらした「ヴォイド」……その子供として産まれた一匹のサメ。それが彼ことカナデではあるが、彼にこんな名前を付け、育てたのは、他ならないヴォイド討伐の立役者、紅矢倉雫博士であり……彼女の弟にして、ヴォイドの被害者、その第一号の名前を、紅矢倉奏という。

 

何やらどろどろとした関係が見えてきそうではあるが……ややネタバレになるが言ってしまうと、その実態はひどくサッパリしたもので、雫博士はカナデくんの事を本当に、心の底から弟のようにかわいがっているだけなのです。

 

逆になんでそんなサッパリと普通の関係を築けているんだ、という話になってくるだろうか。成田読者向けに言うとダラーズ末期、ブルスクで活動している頃の帝人くん味が少しあるか。「なんでそんなに普通なんだ」というか……ただこの奇妙な姉弟の関係が非常によく描かれているので……気になる方はぜひとも読んでいただきたい。

 

全ての「お姉ちゃん」の味方、カナデの雄姿を、どうかその最後まで……!

 

成田作品内で全ての「お姉ちゃん」の味方であろうとするのは、そりゃあ貴方割と大変な事ですよ。それでもきっとやり遂げてくれるだろうけれども。

 

褐色腹筋善良寄り女テロリスト イルヴァ

――問題はそこだ。
――そんな甘ちゃんの偽善者が、なんで悪党どもの部隊のリーダーなんかやってると思う?
――さっき言ったような倫理観のねえ悪党連中が、どうして大人しく従うと思う?

 

――化け物だからさ。
――悪党だって命は惜しい。
――だから、化け物には逆らわねぇ。

(炬島のパンドラシャーク (上)P161)

 

そんな「ヴォイドの遺産」……カナデの身体やそこに施された技術を狙う研究者の集まり、「カリュプディス」。イルヴァさんたち傭兵集団、「バダヴァロート」の今回の雇い主は彼らであり、イルヴァさんは仕事の一環で、進化するカナデと幾度か相対する事となる。つまり雇われて仕事をしているだけの傭兵なので、テロリストともまた正確には違うんですが、まぁ犯罪行為専門の連中なのでわかりやすさ優先で。

 

他成田作品で言うと「虹色頭のテロリスト」や「池袋の首無しライダー」を引き合いに出して語られている。マジで。引き合いに出せる貴方は何者なんですか?彼らのパーソナル……人格的な部分まで語れる貴方はいったい……一応他の人からの伝聞もありそうではあるが、その内貴方本人も出てくると俺は見ていますよ。

 

そんな名も知れぬ彼が語るように、確かにイルヴァは甘い。子供が計画に巻き込まれそうなら顔を曇らせて心配する……そんなシーンも、上巻の冒頭には確かにある。まぁ、やめないんですが。巻き込まれないといいなぁ、と、思うだけなんですが。しかしその心配には、確かに一点の曇りもない。

 

非道な悪党をまとめあげ、それでも自分の中の「甘さ」を捨てず、それでいて全くそれが弱みになっていないという恐るべきリーダーである。部下のベルトランさんのセリフからするに、たぶん何人かの部下が「まぁ所詮噂は噂だろ」「最終的には甘いしなんとかなるやろ」的な感じで反乱しようとしたっぽいものの、それでもまだそこに立っている。それがイルヴァさんの強さなのだ。強すぎて付き合って日が浅いと信じらんねぇ。

 

そりゃあもちろん素の身体能力もかなりのものでしょうが、その強さを支える一番のポイントは危機察知の能力の高さ。「死の予兆」を虹色の光として視覚情報で直感的にとらえ、そのすべてを搔い潜る!

 

回避特化のスピード・テクニックタイプの強さですね。反面、攻撃は基本的に銃や爆弾など道具に頼っているので、素手の攻撃力はさほどでもない……?……いやこれは素手で銃や爆弾を超えるどこぞのバーテンダーとかがおかしいな。「攻撃を避けるようではまだ二流。一流は普通に耐える」とかも、それはレミングスとかがおかしいからな。

 

いやしかしマジで回避とそれに伴う移動性能は成田キャラで随一かもしれませんよ。グレネードランチャーの爆風を避けるとかやらかすからね。ビルの壁を蹴って加速しながら落下する、とかは葛原さんもやっていたけれど、イルヴァさんは駆け下りていくからね。臨也のパルクールがどうとかいう話ではない。これは本職の傭兵と比べるのは流石に臨也がかわいそう、というのもある。

 

そしてイルヴァさんを語る上では、やはりそのビジュアル面の魅力は外せない!褐色の肌に割れた腹筋……ツリ目……凶暴な笑顔……刺さる人にはとことんぶっ刺さるデザインと言えるでしょう!戦闘シーンも多くイラスト化され、嬉しい限りでございます。

 

……そしてそんなイルヴァさんは、最後には…………ぜひとも読んでいただきたいですね!

 

 

 

 

 

 

こんな2人が戦う炬島のパンドラシャーク!上下巻で完結済みなので、よろしければぜひご一読ください!

 

まだまだ魅力的な登場人物が盛りだくさんで……個人的にはイルヴァさんの副官、バダヴァロートのNo2ポジションのベルトランとか好きですよ。無駄な弾丸は使わない。無駄に人を殺したりはしない。部下や同僚を思いやる気持ちも、まぁ、ある程度はしっかり持っている。けれども必要となればクズなことも平気で出来てしまう、ある意味イルヴァさんの部下に最も相応しい人格の持ち主で……。でもこういう映画(小説だけども)で女子供をイジメる奴の末路は、ねぇ?

 

ご一読した際には、もしよろしければこちらの読書メモと個人の感想もどうぞ。お口に合えばよいのですが。割とネタバレあるから読む前に読んだらあかんよ。特に下巻。まぁその場合何言ってんのかわかんねぇと思うけど。

 

 

zattomushi.hatenablog.com

 

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