節足雑踏イケタライク

日々思った事や、書籍・映画・その他の感想なんかを呟きます。あまりマジメではございません。

5連続敬遠と便所ワンキル「甲子園が割れた日」

球技全体への興味が0の自分ではあるが、今年の夏は妙に野球を意識していた。やはりにじさんじ甲子園の影響であろう。日頃応援しているライバーさん方による「甲子園」は、球技の興味0、体育会系の印象マイナスの俺にも若干の影響をもたらした。

 

マジで良い試合揃いだったので本戦だけでも見てください。気になる高校があればここまでの道程も追ってみてください。俺は王立ヘルエスタ高校を推していた。勿論、どこも好きでしたがね。

 


【#にじさんじ甲子園】にじさんじ甲子園 本戦 〜Aリーグ〜【パワプロ2020】

 


【#にじさんじ甲子園】にじさんじ甲子園 本戦 〜Bリーグ〜【パワプロ2020】

 

こんな機会はなかなか無い。俺がスポーツに興味を持てるタイミングなんてものは、10年に1度あるかどうかである。無駄にするには貴重だが、この猛暑の中でスポーツを実際にやるほどでは無い。2時間で倒れます。嘘。20分で熱意が0になって止める。クーラー最高。スポーツの本を読むきっかけにするくらいが健全だろう。

 

書店で探せば面白そうなのがあった。「甲子園が割れた日」である。今にして思えば甲子園に熱意を持ったのをきっかけとしてこの本に興味を持つあたりが「性根」を示しているようで、嫌ですね。

 

 

【あらすじ】

「甲子園なんてこなければよかった」――。球史に刻まれた一戦、1992年夏、星稜vs明徳義塾明。松井との勝負を避けた明徳は非難を受け、試合をきっかけに両校ナインには大きな葛藤が生まれた。あれから15年、自らの人生を歩みだした監督、元球児が語る、封印された記憶、高校野球の聖地で、彼らは何を思い、何が行われたのか。球児たちの軌跡を丹念に迫ったノンフィクション。【カバー裏より引用】

 

以下、ネタバレ注意。

 

 

 

真剣勝負というのは横から見ていると時に滑稽である。俺の好きな「真剣勝負」はインドア系なのでそちらの話をするが、遊戯王というカードゲームでは一時期の海外で、「対戦が始まって『とあるモンスター』を場に出したら、試合終了寸前までトイレに籠る」という……敢えてこの表現を使うが「戦法」が存在した。

 

俗称を「便所ワンキル」という。詳細は省くが『とあるモンスター』は相手のターン開始時にダメージを与える事ができて、色々なカードで「呼び出す」事ができる。そして海外の遊戯王(大会)では試合に制限時間があり……その制限時間を超えると残りの体力が多い方が勝つので、「こちらが先攻で『とあるモンスター』か、あるいは『呼び出せるカード』が手札にある」……そんな緩い条件をクリアすれば、相手に制限時間寸前にターンを渡し、ごく微量のダメージを与える事で……勝利できる。

 

誤解を恐れずに言えば、遊戯王において先攻1ターン目で勝負が決まる、というのは、別に珍しい事ではない。公式ルールはそれが「やりにくい」ように気を使っているけれど、その時々のカードプールにより様々な「先攻1キル」は存在し……当然のように「後攻1キル」も存在し……流石に実際1キル出来るかどうかは腕前と運と相手の盤面が絡んでくるのだけれど、「1ターンで切り札を出し、相手への妨害策も並べ、ターンを渡す」くらいならもう、当たり前である。勝負は1ターン目で、ほぼ決まる。それが遊戯王の大会だ。大会でそれが出来ないなら、それはデッキの構築かプレイングを誤っている。

 

そんなガチ勢の集いにおいて「珍しくはない、ほぼ勝負が決まる盤面」に過ぎない「便所ワンキル」が、何故蛇蝎の如くに嫌われたかと言えばコレは、成功率がそこそこ以上に高いのもあるが、何より番外戦術が過ぎるからである。

 

いや、だって、コレをやられた側の立場になって考えてみてくださいよ。直前まで入念にデッキの調整を重ね、交通費出して朝から電車に揺られ、独特の空気の会場に辿り着き、さて対戦だ。相手がモンスターを出して……「ちょっとトイレいいですか?」……まぁ、良いよ。許可を出す。急に腹が痛くなることは誰にでもあるだろう………………帰ってこない。…………帰ってきた。おいおいもう時間がないぞ。急いでターンを始め、ドローする。ダメージ。負け。

 

コレは酷いね。記念すべき大会の思い出は、9割方が「トイレ待ち」である。……実際には……「窃盗ジャッジキル」という逆転の荒技があるらしいけれど……流石にアレは都市伝説だろうと思っている。アレ、バレれば良くて大会出禁、悪くて逮捕だから。やった奴が1人か2人はいるかもしれないが……対策として流行したとまでは。本当、調べてみると色々あって面白いですよ。見ている分には。Vドラコントロールに対する【セルフデッキデス】、好き。

 

遊戯王の話をすると長い。本題に戻る。

 

敬遠なんて全然、可愛いもんだろ。ルールの範疇なんだから。便所ワンキルに比べたら。

 

それが本件、5連続敬遠の第一印象だった。

 

比較対象が悪すぎる。

 

 

 

松井秀喜。俺でも顔と名前が一致している野球選手のうちの1人だ。ちゃんと数えた事はないが、多分、10人いないうちの1人だ。あだ名は「ゴジラ」。なんと選手のあだ名まで俺が把握している!コレはメジャー選手。二重の意味で。

 

そんな奴と勝負したいか。遊びではない「真剣勝負」がしたいか。すれば負けるぞ。絶対に、とは言わないが、高確率で。……勝負を避ける判断は、責められませんよ。

 

実際この本でも「敬遠」自体を嫌っている人は、ほとんど居なかった。「5連続」に疑問を呈する人はいたが、「敬遠」はルールで間違いなく認められている。ここはグレーゾーンですら無い。真っ白だろう。……まぁ、真っ白な事でも嫌うだけなら、ちょっとはいるのは人の世の常。具体的には、解説の松岡英孝さんとかな。

 

【第1打席、第2打席の時点で、松岡は既に《勝負して欲しかったですね》と繰り返していた。そして明徳が敬遠を重ねる度に、感情のボルテージを上げていく。

 

第3打席では《勝負しなきゃイカンですよ》と切るような語調になった。さらに《高知の野球とはちょっと違いますね》と加えた。

 

第4打席も次のような調子だった。

 

《これはイカンですね》

《これは勝負すべきですね。5万5000の観衆のためにも》

 

最後の打席になると、松岡の声が微妙に揺れ始める。

 

《3年生対3年生の、男の勝負をして欲しい。いや、残念ですよ。本当に残念です》】(p221)

 

これはこれで、ある種の理想的なリアクションではあるけれど。また遊戯王の話になるけれど、こちらが作った盤面を見て相手が「デュエリスト同士の、男の勝負をして欲しい。いや、残念ですよ。本当に残念です」と呟いたら、それは決闘者(特にロック・コントロール系のデッキを好む者)冥利に尽きるからね。照れちゃう。

 

……身内のカジュアルな試合なら多少は自重しますよ?……最近はめっきり、やってねーし。ペンデュラムでカードショップから離れ、リンク召喚からすっかり実戦を離れている。人間関係の変化はねー、どうにもねー。たまにSwitchで遊ぶくらいだねー。

 

 

 

というかこの本読んでるとマジで松井が圧倒的過ぎて。間違いなく「身内の試合では使う前に一声、確認かけなきゃいけないカードカテゴリ」ですよ、こんなん。

 

【実は対戦が決まった時、恩師の石山さん(健一=早稲田大学元監督)と電話で話したんです。それで『勝ちたいんならアイツとは絶対勝負するな。アイツは今すぐにでも全日本の4番を打てるくらいのヤツだ』と】(p102)

 

……コレは敬遠したのとは別の高校の監督の言葉ですが。ココはね、逆に塁にランナー溜めちゃうのを避けるべきリスクとして捉えた。松井以外のバッターもけして弱くない、ちゃんと強いから。どうしようもねえカテゴリだな。順当に回しているだけなのに、ルールから何も外れず、セオリー通りに動かしているだけなのに強い。全盛期の【征竜】か、はたまた【EMem】か。【十二獣】って感じはしないな。アレはルールから外れているので。

 

勿論、甲子園は「公式大会」である。どんなガチカードでも使うべきだ。そして、その「対策」はして、されて、然るべきだ。「直接戦闘めちゃくちゃ強い」相手の対策に、「戦闘を避ける」のは、当たり前じゃないですか。勝ちたいんだから。

 

 

 

ただ対策として考えられるのは……「出塁した松井の活用」で、そうなってくると、この本でも登場した、松井の「次の打者」にプレッシャーというか……タスクが掛かってくる。彼……月岩が打っていれば、と、たかだか本を一冊読んだ自分には言えない。……いや、実際は、言われてるんですけどね。同時期の選手だと若干の当事者意識が出て、言えちゃうんだろうか。

 

【「入学前から野球部の練習に参加してたんですけど、そのときに嫌になっちゃったんです。先輩に、お前が打ってれば勝てたのにな、みたいなことを散々言われて。もちろん、冗談で言ってるんですよ。それは分かってたんですけどね……。でもボク的には応える事があって」

 

そんな軽いやり合いから発生したもつれの中で、ある先輩にまだ中味が残っているコーラの缶を投げつけられたことがあった。その仕打ちに堪えきれなかった月岩は思わず手を出してしまった。それが決定打となった。】(p 166)

 

本当、それを言うかね。

 

 

 

両チームの監督や、敬遠したピッチャー。そして松井本人。それぞれの考えがしっかりあった。

 

それを「魅力的なキャラクター」であるだとか、「青春ドラマ」と表現するのは少し違うだろう。コレはただの現実である。……勿論、この本に書かれている事が全てではないだろうけれども。

 

甲子園。球児の夏。

 

そんなフレーズとは少しばかり離れてしまった、全く爽やかではないインタビューの記録が心に残る。

 

もう少し野球だとか、スポーツだとかに情熱のある人間なら、また少し違う感想が生まれたのかも知れぬ。

 

少なくともこんなに遊戯王ネタに紙面を割く事はなかった。

 

野球にちゃんと関心がある者に、男の感想を書いて欲しい。いや、残念ですよ。本当に残念です。