節足雑踏イケタライク

日々思った事や、書籍・映画・その他の感想なんかを呟きます。あまりマジメではございません。

期待以上の昔話、ブロマンス、ラスト13分「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

男2人の友情……ブロマンス……。スタントマンと役者、彼らの関係は仕事の出来不出来と無関係ではいられない……。しかしそのなかでも残る友情の行方…。
 
 
 
そんなストーリーかなぁ、と予想して行ったら、当たらずとも遠からずというか、間違っちゃあいないんだけどねぇ……、くらいの感じだった。予想よりも長かったが(170分)、予想よりも面白かった。
 
 
 
いやあ、タランティーノを生の映画館で観れる機会もなかなか無い、なんか今回が最後かもしれないらしい、そんなノリで観に行ったら、前評判とはまるで違ったノリだった。以降ネタバレ注意!……ただネタバレ気にする人も公式サイトで紹介されている殺人事件くらいは調べていったほうがいいかも?
 
 
 
……ちなみにこれが初タランティーノ。数年前から「お前好きそう」と言われてはいたが、なかなか機会に恵まれなかった。
 
 
【あらすじ】
ラスト13分。映画史を塗り替えるのは―この二人
 
 リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)はピークを過ぎたTV俳優。映画スターへの道がなかなか拓けず焦る日々が続いていた。そんなリックを支えるクリフ・ブース(ブラッド・ピット)は彼に雇われた付き人でスタントマン、そして親友でもある。
 
目まぐるしく変化するエンタテインメント業界で生き抜くことに精神をすり減らし情緒不安定なリックとは対照的に、いつも自分らしさを失わないクリフ。この二人の関係は、ビジネスでもプライベートでもまさにパーフェクト。しかし、時代は徐々に彼らを必要とはしなくなっていった。
 
そんなある日、リックの隣に時代の寵児ロマン・ポランスキー監督と新進の女優シャロン・テート(マーゴット・ロビー)夫妻が越してくる。落ちぶれつつある二人とは対照的な輝きを放つ二人。この明暗こそハリウッド。
 
リックは再びハリウッド俳優としての光明を求め、イタリアでマカロニ・ウエスタン映画に出演する決意をするが――
 
そして1969年8月9日――それぞれの人生を巻き込み映画史を塗り替える【事件】は起こる。(公式HP ストーリーより)
 
 
 
【感想】
こんなあらすじだけどそんな「泣かせるぜ感」はしなかったとさ。……というかイタリアで出演する下りまでバラしてるのか。する、しないで結構引っ張ってたんだが。
 
 
 
全体の流れとしては「落ち目の役者とそのスタントマンの関係及びそれぞれの仕事の様子を描きつつ、いずれ起こる事件へ近づいて行く」というもので、事前情報で私が予想していた、売れっ子たちが嫌味ったらしくネチネチと主役達を責めるとかそういうシーンはあんまり無い。というか割と後半まであんまり絡まない。
 
 
 
それをやるのはどちらかと言えば周辺人物だ。「お前達よりは売れっ子を使いたい」「それでも使ってやるんだからあんまり文句言うなよ」そんな事をオブラートぐるぐる巻きにして言ってくる奴はいる。ただ彼らとは別に主人公達のかつての活躍を評価してくれるスタッフはしっかりいるし、オブラート派閥のいう事も正直一理あると思うので、そこのギスギス感はあまり気にならなかった。監督の奥さんの車を喧嘩で壊すような奴は、そりゃあ、怒られる。
 
 
 
それに落ち目の役者落ち目の役者とはいうが、そんなに貧乏貧乏はしていない。確かにスタントマンは中大型犬とトレーラーハウス住まいだが、まあ、食べるには困っていないようだし、犬も缶2つ+αをモリモリ食べている。「多くね?」とは思うがアイツ一日一食なのかな?それならまあ解る。役者はもう、家にプールあるし。仮にもハリウッドで持ち家に住んでるんだからそりゃあ我々の貧乏と比べたらいけませんよ。
 
 
 
逆に売れっ子もそんなに金持ち金持ちはしていない。「陽」の極みみたいなダンスパーティはあったけれど、それくらいか。あれは資金よりも社会的立場のハードルの方が高そうだ。「この映画私出てるんだけど」と映画館でタダ見交渉していたのは金が惜しかったからでは無いだろうが、そういう場面もあった。「意図しないが現実としてある対比」としても、あまり毒毒しくは無かった。
 
 
 
そんな事よりも、とにかく落ち目の役者とスタントマンのキャラクターが濃く、またその関係に関しても深く描写されているのが良かった。公式で「兄弟以上、妻未満」。それぞれに印象深いシーンは多く、勿論全体の流れがつまらない訳では無いんだが、その時々で特定の物が観たいと思うようなシーンが多かった。で、結局そこから通しで見ちゃう。そんな映画。170分だから下手に見ちゃうと予定ダダ狂いだけどね。
 
 
 
役者sideで印象深いシーンはやはり子役の子との掛け合いか。このシーン子役の登場だけで「勝った」感が強くて。黒い革張りのおっきな本……ウォルト・ディズニーの伝記を読みながら、「スタジオにいる時には役名しか呼ばれたくない。そうした方がほんの少しだけでも良い演技ができる気がする」「役者として常に役の追求を心掛けなくてはいけない」と意識高く語る。小っちゃくて椅子に深く腰掛けたら足もつかないような子が!こんな子とかつてはそんなことも思っただろう役者が、酒場のセットで椅子を並べて読書する。良いおじロリだった。この2人が実際に「役者」として演技する作中作もあるので、見たいものはしっかり見せてくれる。セリフ忘れちゃう所も、気合入れて共演するシーンも。
 
 
 
スタントマンsideとしてはブルース・リー気取りの役者(あとから知ったけれどあれガチでブルース・リーがモチーフなのね。ファンから怒られたりもしたみたい)を監督の奥さんの車にたたきつけるシーンもいいが、やはりジプシーの集団の所に行くシーンか。年の離れた恋愛を匂わせつつも、いざ彼女たちジプシーの元へ行ってみると、そこはかつて自分たちが撮影していた思い出の場所。しかも当時の知人が、なにやら面倒事に巻き込まれているかもしれなくて……。この辺りのシチュエーションと、「きな臭さ」の演出は流石だったし、結果としては思い過ごし(まあとりあえずこの場では)だった時の居心地の悪さと言ったらない。共感性羞恥持ちには少々キツい。そう思っていたら態度が悪くて実害与えてきたジプシーをぶん殴るアクションシーンに移行するんだけどね。
 
 
 
そしてラスト13分。宣伝でもウリにしているラスト13分。予想とはまるで違っていたラスト13分。多分あの宣伝の仕方だと見に行かない「見たらハマる人」も多いだろうラスト13分。ジャンルが違いすぎて怒る人もいるんじゃねえかなラスト13分!いや13分かどうかは測っていないけど、まあ、あの流れ!
 
 
 
あれは凄いハッピーエンドだと思っていて、それは本当にラストのこれからの展望を思わせるシーンもそうだし、全体の流れとして、「あのままだと順当に疎遠になっていっただろう2人が、また会う約束を明確にした」、それが凄く個人的なツボにハマった。まあすぐに疎遠になったとは言わない。多分半年くらいしたら1回会うし、しばらくそのくらいの頻度で会うだろうが、だんだんと間隔があいていって……1年……3年……それはもうどうにもならない流れである。
 
 
 
しかし最後のあの「事件」。あれを乗り越えたらまぁ、残り一生やっていけるだろう。根拠は無いが、しかしそのことについては不思議な確信が持てた。お見舞いという形でもすぐに会う約束もしたし。だからこれは良い映画だ。私はそう思ったとさ。まだ見ていない人にもぜひ見てほしい。アクションと西部劇とおじロリとハリウッド映画のどれかが好きならばさあ!皆で「状況を一切理解していないハリウッドスターが人間1人を火炎放射器で焼き殺すシーン」を見よう!
 
 
 
拾いきれなかったネタとかもあると思うから、もう少し勉強してから見ればもっと良かったかな?