Twitterで広告ツイートが流れてきて、面白そうなので買いました。1巻と2巻を一気に。面白かったです。
- 価格: 605 円
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以下ネタバレ注意。
【あらすじ】
動かせ 歴史を 心を 運命を ――星を。
舞台は15世紀のヨーロッパ。異端思想がガンガン火あぶりに処せられていた時代。主人公の神童・ラファウは飛び級で入学する予定の大学において、当時一番重要とされていた神学の専攻を皆に期待されていた。合理性を最も重んじるラファウにとってもそれは当然の選択であり、合理性に従っている限り世界は“チョロい”はずだった。しかし、ある日ラファウの元に現れた謎の男が研究していたのは、異端思想ド真ン中の「ある真理」だった――
命を捨てても曲げられない信念があるか? 世界を敵に回しても貫きたい美学はあるか? アツい人間を描かせたら敵ナシの『ひゃくえむ。』魚豊が描く、歴史上最もアツい人々の物語!! ページを捲るたび血が沸き立つのを感じるはず。面白い漫画を読む喜びに打ち震えろ!!
(Amazon商品紹介より引用)
……この漫画を読んだ後で、親と「地球の運動について」の話をする機会がありましてね。まぁ、それが主題では無かったが。なんかのクイズ番組だか天気予報だかから派生したんだったと思う。
親は言うんですよ。
「地球の周囲を太陽が回っている」と。
助詞を使い間違えただけだと言い訳していましたが、いやぁ、怪しいね。アレは多分、素だね。天動説じゃねーか、という話になって、他の家族にもやいのやいのと言われた親が一言、事もなげに言ったのは。
「どちらでも良いでしょ」
で、これまたやいのやいのと言われておりましたが、その時俺はやいのやいのと言いながらも、この漫画の事を考えておりました。
まぁ勿論。賢明な皆様におかれましてはご存知の事かと思うが、「どちらでも良い」という事は無い。我々の社会は地動説を前提にして動いていて(文字通り!)色々と恩恵も受けている。「動く地球の周りを動く」衛星によるGPSとか、めちゃくちゃ使っている。そんな我々が「どちらでも良い」という事はできない。ノーランド(ONE PIECE)がブチギレる。
「この偉大な“進歩”をお前達は踏みつけにしているんだ!」
……空島の過去編、ONE PIECEの回想の中で一番好きかもしれなくてねえ……。リアルタイムで追ってたら「長ぇよ!」となったかも知れないが、俺は単行本で一気読みしたので。リアルで追い出したのはスリラーバーク中盤くらいからかな?
まぁ、このセリフは好きなので、「踏みつけ(文字通り)」とか茶化すのはやめましょう。……思いついちゃったんだもんよ。
さてそんな具合に世界の状況を「理解」している自分だが、それは義務教育で一般常識として習ったからで、その前段階である……例えば「チ。」の世界に生まれていたとしたならば、何も知らない俺は「どっちでもいいじゃん」と言うだろうし。
……流行の「現代知識を持った上で転生」を果たしたとしても、俺はやっぱり「どっちでもいいじゃん」と言う……いや違うな。
俺は「天動説が正しいに決まってるだろ!」と言うね。その場合は。生まれた場合も訂正しとこ。俺の「現代知識」では天動説覆すのは、どーにもならんもんよ。火炙りめちゃくちゃ怖いもんよ。
身元の確認も取れないような庶民、下層階級があんまり天動説に詳しいのも不自然?そんな事言われたって、じゃあ、どうすれば良いのさ。
そんな具合の俺に対して、「チ。」の彼らはひたすらタフに、「もしかしたら正しいかもしれない」地動説を信じ続ける。爪を剥がされても。苦痛の梨を喰らっても。焼かれても。
その姿を見て、軟弱者は戸惑うばかり。計算の上でも、一応は天動説、成立してるんですよ?たまに惑星の動きが止まったり、急に曲がったりするが、それらも予測は出来る些細な問題だ。
そこをナアナアで済まさない異端の研究者達を見て、如何にもめんどくさそうに尋問したり拷問したりするのが、審問官のノヴァクさん。ノヴァクさんは良いですよ。愛娘のいる世界の「平穏」を守るために冷徹に異端を狩る。
そこには同情や良心の呵責みたいなものは無いけれど……それはそれとして、初犯だったり更生の余地がある人間に対しては、案外話の解る側面も持っているし、ボールが木に引っ掛かって取れない子供を、フツーに助けたりもする、と言う。
苦悩の梨で。枝の股を拡張して。
苦悩の梨の平和利用、初めて見ましたね。
「ボール」の引っ掛かった枝の「股」を「拡張」して「ボールを取る」のが、果たして本当に平和利用なのかどうかは、別途議論が必要でしょうが。……マジでそういう隠喩だったのかな、アレ。
ある意味ではこの漫画で一番「論理的」な人物かもしれないんですよ、ノヴァクさん。そりゃあ今の天動説……プトレマイオスモデルでは、説明しきれない宇宙の法則、というモノはあるかもしれない。けれども、そもそも宇宙の法則をすべて説明する必要がどこにある?そんなものを追求した結果、神の世界を崩すことになってしまうのであれば、多少計算が面倒なくらいは目をつぶったっていいじゃないか。
……そんな「理屈」のノヴァクさんがパニクるシーン、というのが1巻の山場で、そしてこの漫画全体を通しての……この漫画の言葉を借りるのであれば「直感」を象徴するシーンなのかな、と思う。
2巻のキャラも良いんですよ。自力で惑星の周期運動に気が付いた……けれども独学の悲しさか、重要な事を知らなかった……が、もしかしたら宇宙の秘密に自力でたどり着けるかもしれなかった傭兵に、超ネガティブ傭兵、そして不良修道士のバデーニさんだ。
この後も魅力的なキャラは多数登場するのだろう。してしまうのだろうけれども。天動説から地動説への転換を果たした「彼の名」を、知っている者はわかってしまう。
「彼」までは負ける。
どうせみんないなくなる、と。
それでも彼らに後悔はない、のかもしれない。「愚かな妄想」に憑りつかれた彼らの狂気に、あるいは×に、軽々しく賛同すべきではない。
10年後ノヴァクさんも、「あの出来事」でやさぐれたのか、順当にやさぐれただけなのかわかんねぇ塩梅が好み。娘さんとは仲良くやれてんのかな。
あと、あくまでもこの物語はフィクションなので「彼」以外が最終的な勝利を収める可能性は全然あるのです。
「C教」とか、ナンノコトダカワカラナイデスネー。