節足雑踏イケタライク

日々思った事や、書籍・映画・その他の感想なんかを呟きます。あまりマジメではございません。

「嘘喰い」業の櫓の素朴な人主、または読者

嘘悔いが実写化するらしいですね。……話自体は割と前からありましたが。まぁ。うん。

 

ポスターやちょっとした映像なんかが公開されるところまで話が進みましたか。そうですか。まぁ。うん。

 

……だいぶ独自の味付けが強いようですね。

 

まぁ……そうさなぁ……初めは「マキャベリストゲーム」主体で、各種それっぽい「芸能人」を仕立てて、たとえば「人気司会者」……の見た目のモデルっぽい人はもう引退しちゃってるから、今だと…………とかにしたら面白いかな、とは一瞬だけ思ったけど。

 

でも……俺、あの司会者、割と好きだし……「最後に裁かれるべき罪人」周りの描写、嘘喰い本編の中でも結構好きなシーンというか、流れというか、仕掛けだし……そんな演出はよく考えなくとも悪趣味だし、してほしくねえなぁ、という感じで落ち着きました。全員ネタにできねえ犯罪者ばっかりだったわ。ネタにできる犯罪者、とは一体。

 

実際行くかはまぁ、しばらく「見」にまわってからにします。ラインとしては、そうですね、號奪戦が見れそうなら、たぶん行きます。

 

そんな嘘喰いの、俺が何気に好きなシーンの話をしましょう。

 

まぁ、確実に実写化はしないし、この後アニメ化とかの企画が持ち上がった際にもたぶん改変されるんじゃねえかな、というシーンです。

 

経緯を説明しましょう。ネタバレ注意

 

 

業の櫓、というゲームの終盤にそれは起こりました。

 

業の櫓は、相手と自分が最大10個の珠を任意の数握り、その合計数を当てる、というシンプルなゲームです。合計数を現場の最上階にある【装置】に入力すれば勝利なのですが、【暴力禁止】の縛りが設けられているのは現場1階の限られたエリアのみ。ヒョロガリ主人公にとってみれば、1階から出る事はほぼ、死を意味します。

 

……獏さん、本当に身体弱いからね。殴り合いなら一般人……君がそれなりに鍛えていて、もし武器か何かを持っているなら、おそらく分はそちらにある。……そんな事したらエラい事になるので、俺はしませんけれど……。

 

さて、こんなゲーム、ただ当てずっぽうで当てられる訳もない。装置に入力できるのは、2人2組、計4人のプレイヤー、それぞれ各々1回ずつなのだから。そこでゲームを補助する為に設けられた施設が、【血の教誨師ドティの部屋】である。

 

ドティの部屋では、相手との合意が取れているのであれば、自分が考えた【合計数】があっているかどうかの判定を行う事ができる。もし【合計数】があっていたならば……相手は、自分の「血液」を輸血され、凝血、死に至る。

 

尚、ドティの部屋においては、【ありえない合計数】を入力すれば、即ペナルティがくだされる。……わかりやすく言えば、入力する数字は、「自分の珠の数+1」以上でなければならない。

 

ここで私の「わかりやすく言えば」に「なるほどそうか」と素直に頷いてしまった人は、嘘喰いのところに異世界転生してもギャンブル方面に行ったらダメですよ。裏があるに決まってるんだからこんな表現。せめて暴担当を目指しなさい。そちらもキツい道のりだが。あるいはもう、普通にラーメン屋さんとかやりなさい。治ラーメン……!

 

本来であるならば、このドティで合計数を当て……相手を殺し……悠々と最上階で入力、というのが定石になるのであろう。

 

まぁ、この漫画は「嘘喰い」なので。バンバン外に出て、バンバン殴り合うんですが。しかも途中から第三勢力や警察も乗り込んできてねぇ。大変でした。みんなでバンバン殴り合うんですよ。獏さんも外に出てボコボコにされました。何をやっているんだ。

 

……ここで「何をやっていた」のかは、割と本当に大事なポイント。まぁ、せいぜい気を付けるが良い。どうせ解らんだろうけれども。

 

さて、この戦いは、色々な人に「観られて」いた。

 

代表的なのが【人主】である。まぁ、ひどく悪趣味な馬主みたいなものです。試合に出資し、その様を特等席で見物し……もしも負け、負債が発生した際には、無様な敗者の死をもって、留飲を下げる。そんな彼らは、この試合を見物し……口々に試合の様子を見て、色々言っていた。

 

彼らは、基本的には悪党である。

 

人が死ぬ様をハイテンションで見たい見たいと騒ぎ立てる、悪趣味な集団である。

 

そもそも賭博自体犯罪なので、そこに加担する彼らに良心を期待する方が間違っているのか。

 

「これで血が入れば確実に死ぬぞ!!弱ってる奴を見るのはなんて気分がいいんだ(228話)」

 

「順を追って考えよう!嘘喰いの珠は1・2が消えたこれは動かん(229話)」

 

「守りに行くなら14より13が安パイ!自分の数を読まれにくい(230話)」

 

嘘喰いの導き出した渾身の数字!!絶対の自信を持って指を突き刺した正解パスワードだろ(237話)」

 

無責任な第三者は、聞こえないのをいい事に、無遠慮に勝負に口をはさみ続ける。

 

だが、少し見方を変えてみれば、これは「熱心な読者」そのものではないか?

 

「彼ら」の命懸けの戦いを、どこまでも安全圏で、好き放題しながら見物する第三者……金を出してもいないし、観れる「カメラ」が写す範囲を考えれば、むしろ彼らより悪質かもしれない。

 

……それも、主人公や相手の一挙一足に「意味」があるとし、「今後の展開」や「今回その選択をした理由」を考察する彼らは、もしも読者だとすれば、それなり以上に熱心な部類。

 

そんな彼らを悪しように表現する資格が自分にあるか。自分がここにいたら、一体彼らのような視点で観れるだろうか?彼らのように熱意を持って観れるだろうか?

 

そんな事を考えていると終盤、彼らの中の1人が、ついに口を開くのである。

 

「……あのさっ」

「ちょっと今さらだけど聞いていい?」

「これって1から10の珠の内相手が何個持っているか それをお互いに探るゲームなんだよな? そして自分の珠との合計数を当てる」

「はぁ?」

「今さら何言ってんだこいつは」

「いや 皆が説明したり先生の表とかも見たけど…こういう数字はちょっと苦手というか さっぱり分かってなかったんだ俺」

「あっ…俺も」

「おいおい大丈夫かお前ら(258話)」

 

……。

 

……把握度が俺以下の奴がいてくれた……!

 

いや、でも凄いんですよこの人。業の櫓ってのはかなり長丁場のギャンブルでしてね。この人が「実は俺全然この勝負わかってねえんだ」っていうの、マジでその最終盤なので。

 

貴方はじゃんけん大会の決勝戦まで見ておきながら、隣の人に「これってグー・チョキ・パーの三すくみ それで勝負するゲームなんだよな? そしてグーはチョキに勝ててパーに負ける」と言えますか?

 

まぁもう終わるし、皆盛り上がっているし、いいや。

 

見栄を張って、そう思ってしまわないだろうか。

 

解らない事を解らないと素直に言える。コレは常に美徳である。例え悪人であろうとも、それはまぁ例外なくそうだろう。悪人に一欠片の美徳があっても良い。相殺されるかは知らん。ケースバイケース。でも個人的にはこの人は大した事やってないと思うよ。

 

「これって実在しない企業による架空の投資話 それにあの人を乗せて金を出させようとしてるんだよな? そして俺たちでその金を山分けする」

 

つまみ出せこんな奴。必然、今こうして呑気に生きていられるのなら、「そういう局面」は無かった、という事なので。

 

「これって人の指に生えている爪 それを剥ぎ取った痛みで情報を得るゲームなんだよな? そしてお前はまだ何も喋っていない」

 

……コレはちょっとサイコで怖いね。この路線はあるかもしれない。

 

というか「業の櫓」の人主さんは色々素朴なんですよ。嘘喰いと対戦相手のそれぞれの思考を表にしてくれる人とかいるし。

 

「俺が今表にして計算してやる(231話)」

 

「おおーさすが教授仕事が早ぇー さっそく見させてもらうぜ」

「おお いい出来だ(234話)」

 

このためにわざわざ会員だけが観れるサイト立ち上げたみたいですからねこの人。ネット音痴としては雲の上の存在である。ただ悲しいかな、この表は、その……まぁ……無いよりはあったほうが分かりやすいけれども……。

 

……まぁ、こんな人主さんの愉快なやり取りは、実写版やアニメ化の際にはほぼ間違いなくカットされるので、よろしければ漫画をぜひご覧ください。

 

初期と後期でだいぶ絵柄が変わるのと、最初期のトラブルバスター路線はそんなに面白くないのだけ留意していただければ、多分あなたはハマります。

 

そうだなぁ……。

 

立会人が「アカン! このままだと嘘喰い負けるで!」って言って、実際マジで嘘喰いがそのまんま特に逆転せず普通に負けるくだりまでは読んでみてください。……言っちまうか。「負けるぞ」って言われるのは93話で、マジで負けるのは95話です。

 

こういう表現で最終巻まで読ませるの、そんなに面白いネタでは無いと思うんだよね。

 

そこまで読んだら「××編」とその後の「××の××××××編」とその後の「××の××編」までは読んで貰えるだろう。

 

ハマれ!

 

推しの立会人は課長です。あの人、立会人としては全然新人で、「仕事」としてはプールに入って器物損壊しただけなのに、めっっっっっちゃ大事な試合の担当を決める儀式でマジになって立会人歴が長く人気もあるベテランを追い詰めてるの本当に空気が読めなくて好き。

 

あの場にお前が行ったらどんな空気になると思ってんだ。