さて今宵のワンドロは越佐大橋シリーズだ!
作品そのものについては以前書きましたので、今回のワンドロではそこにはあまり時間を割かず、好きなキャラクターについてさっさと語っていきましょう。
といってもキャラクターはみんな好きなので誰にしようか迷いますね。前に書いた記事で男3人……狂犬と忠犬と番犬については書いたので、じゃあ今度は女の子3人にしよう、そうしよう。
そんな感じで書いていきます。
砂原潤
「後は……おお、そうだ、あいつが居た」
そこで一旦言葉を区切り、虹頭の男は楽しそうに微笑んだ。
「可愛い猫の事を忘れてたよ。誰よりも古くから『島』に住み着いて、『島』を食い荒らす鼠を狩る、可愛らしい猫の事をな」
目の前に届けられたツマミに齧りつきながら、一人の伝説について語り始める。
「キマグレで、わがままで、でも放っておけない奴だ。思わず喉の下とかゴロゴロ撫でてやりたくなる程にな。……ただ、あいつの爪はもの凄いんだよな。いや、例え話とかじゃなくて……物理的に恐ろしいんだ」
「何しろ、あいつの爪って言うのはさ——――」
(MewMew P16‐17)
色々あって島を一時離れた虹色頭。旅先で出会った見知らぬ男に、語りかけるは島の伝説。番犬や殺人鬼、ラーメン屋やスリ師のおじさんに続く形で、一人の猫の名を挙げる。
さて、気のいい兄ちゃん的な性格で忘れがちだが、虹色頭の狂犬は山賊だったり海賊だったりしたこともあるテロリストである。鉄火場の経験は成田作品でも上位にくるだろう。そんな彼が、ただの「爪」ごときで怯むはずもないのだが……彼が「恐ろしい」とまで称するそれは、果たしてどのようなものなのか。
猫の名前は、砂原潤。
一見すると気弱な少女。こんな治安の悪い島には、とても似合わないような外見で……実際その日は、出社の最中にチンピラに絡まれてしまう事となる。本土から来たばかりの彼らが、「何日か連続してこの時間にここを通っている」と……そんな風に目をつけたのだった。不運な事である。
「あのぅ……」
——手を放してくれませんか?
そう頼もうとしたところで、チンピラの怒声が覆い被せられた。
「あぁ?」
「……ぃぇ、すみません……」
(MewMew P49)
彼女の性格では、とても無事ではすまないだろう。一瞬でも油断したのがよくなかった。いったいどんな目にあってしまうのか。どんなHな目にあってしまうのだろうか。
次の瞬間、少女の背中から滑り出した物は——
「え……」
チンピラ達が揃って声をあげた次の瞬間、
バルルルルルルルル———————
コンクリートで覆われた階段の踊り場に、猛獣の雄叫びのような轟音が激しく反響する。
(MewMew P50)
HはHでもHELLの方だがなぁ———!
世界のすべてに謝ってしまいそうな表情から一転して——今の彼女の顔には、天使のようにさわやかな笑顔が張り付いている。
目は紙に隠れたままであるものの、見る者全てに安らぎを与える表情だ。
見た目ほど重くないのだろうか、彼女は片腕一本でチェーンソーを空中に制御し、呼吸一つ乱れてはいない。確かにそのチェーンソーはエンジン部分が既存品よりもかなり小さく、細長い刃の部分と相まって、見る者に日本刀の姿を連想させる。
そんな奇妙で危険な玩具を振りかざしながら、潤は笑顔のままで自己紹介を開始した。
「ええと……はじめまして、私は——この東区画で一番偉い人の護衛部隊長をやっている、砂原潤と言います!」
(MewMew P52)
そんなわけでチェーンソーガール、砂原潤ちゃんです。チンピラの皆様はご愁傷さまでした。完全に蘭姉ちゃんが人質に取られたときのテンションで眺めていた。ぶっちゃけそんなにご愁傷さまだとも思っていないです。ナムアミダブツ!
普段は大人しい潤ちゃんですが、チェーンソーを付けるとテンションが爆上がりするよ。可愛いね!護衛部隊の隊長を長期にわたって務める極めて優秀な護衛である。ちなみにここの隊長はみんなでじゃんけんをして決めている。やる気があるのか。困った事に、めちゃくちゃある。
さて、チェーンソーは良い武器だ。神も悪魔も切り裂くその刃は、人間など容易く切り裂くであろう。さながら13日の金曜日のジェイソンのように……とか書くと彼女に訂正を促されるので注意が必要である。ジェイソンはチェーンソーで人を襲ってないのです!
成田作品のメカクレキャラ初期メンツでもある。「たまにチラ見えする」タイプのメカクレ属性……バーソロミュータイプですね。「絶対何があっても見えない」タイプとここには明確な差がある。「絶対何があっても見えない」タイプはDMDPの小夜さんとかが入る。この辺りは有識者の知見が欲しいところ。私はこの分野は専門外です。
さて虹色頭さんもちらと触れておりますが、彼女は島の最古参。島のエンジン技師を父に持ち、建設途中からも島をたびたび訪れていた彼女は、島への愛着も人一倍……だからこそ、島を脅かす外敵には、決して容赦しないのだった。
島そのものを護衛する、番犬ならぬ番猫の爪は、果たして何を切り裂くのか——。
どうかその目で確かめていただきたい!
麗蕾(リーレイ)
そういえば麗蕾ちゃんについては前にも少し書いたなと思い出すなど。
まぁ改めて書きますか。
「…可愛い。言われた。だからいい」
(がるぐる!(上) 口絵・西区画)
ダウナーなテンションで鉄パイプをぶんぶん振り回す、西区画の戦闘員。普段はビルの屋上でお昼寝をしているか、島の子供たちに抱き着いているかのどちらかだ。どちらにしても可愛いね!
さてジト目が可愛い彼女であるが、実は本来のプロットというか、予定ではいなかった登場人物なのだとか。これに関してははっきりと証言が取れている。
裏話……そう、裏話をしましょう。口絵を頂いた瞬間、その余りのイラストのすばらしさにキャラが増えました。上巻の本文に出ていないキャラも、下巻で大活躍する可能性がありますのでお楽しみに!具体的に言うとリーレイとかリーレイとかリーレイとか。
(がるぐる!(上) P284(あとがき))
つまり何が言いたいかというと、ヤスダスズヒトさんマジでナイスデザインという話である。ちなみに成田作品では割とよくある事。ちょっと情報元が今すぐには出せないんですが、確か同シリーズの雪村ナズナさんもこのパターンじゃなかったかな?
マジで良いデザインをしてるんですよね……現在に至るまで「ジト目」って割と好きになりやすい属性なのですが、その個人的な「源流」は彼女のような気がしてならない。
「な、なあ、恥ずかしいからやめてくれよう」
年齢の割に発育している少女の胸に後頭部を挟まれながら、少年は必死にその束縛から抜け出そうと試みていた。
だが、背後から抱きしめる少女はその手を緩めるつもりはないらしい。
「嫌がるのも、可愛い。キュウ」
(5656! P61)
「あのネーちゃん、俺達には優しくしてくれるっつーかエロくしてくれるっつーか、まあ色々してくれるんだけどさ」
「おっちゃんじゃ多分……『可愛くない』って相手にもされないぜ?」
「無理矢理手ェ出したら、鉄パイプの錆にされるよな」
(5656! P79)
あと「おねショタ」の個人的な「源流」も彼女のような気がしてならない。
飯塚食堂の子たちは「色々」についてぜひ詳しく……。
さて単純な戦闘力(本人の弁によればどうも鉄パイプは『手加減』用らしい)は島内上位の彼女だが、見ようによっては大人しく可愛らしい、島には似つかわしくない少女に見えない事もない。
作中でもそんな彼女に惹かれた「おっちゃん」が出てきてしまい、まぁ色々大変な事になりました。この辺りは別記事で書いたが、彼のオチというか末路というかも大変に好みなので、気になる方はぜひご一読を!
一応「5656!」だけでも読めるけど、まぁシリーズ全部を読んでも損はさせませんぜ。
以下余談。
彼女のセリフはどれもあの調子なので「彼女といえばこの一言!」みたいなのを探すのに大変に手間取りました。一応「5656!」では彼女が書いた「日記」を読めるので、長い文章も探せはするのですが。そうなると今度はひらがなで若干の読みにくさが……。
鉄パイプ。鉄鉄鉄鉄鉄。
むずかしいじ。くぎさんにおしえてもらった。
鉄パイプの鉄のじをしりたい。そういったら、へんなかおされた。
くぎさん、イーリーねえさんのごえい。こいびとかもしれない。
おとなのおとこのひとなのに、くぎさん、かわいい。
でも、だきしめる、イーリーねえさんおこる。
こえにはださないけど、ちょっとめをそらす。
きっと、しっと。イーリーねえさん、かわいい。
(5656! P64)
……この書き方、少なくとも一度は「やった」な……。
麗蕾さん、出来ればその際の2人の様子についてもう少し詳しく……。
シャーロット・リバプール
「いいですかシャーロック。この島では殺人なんて腐る程たくさん起きます。人々は犯人が解らないという状況に漠然と不安を覚え、それが架空の『殺人鬼』の仕業という事にして安堵するんです!ウフフ、見るだけではなく推理すれば解った筈だよシャーロッ…………あれ、違う……推理するだけじゃなくて観察すれば……観察するだけではなく逮捕すれば……???」
(がるぐる!(上) P33)
「複数の人物が起こした別々の殺人事件をすべて同一人物の犯行だとでっちあげた人物が居る」……1700年代にとある田舎町で起こった連続殺人事件の推理だったらいい線いっていたのだが、残念ながらここは越佐大橋で犯人は雨霧八雲ってやつなんだ。
島の探偵事務所「ぷらいべえとあい・りざあど」が誇る名探偵。島の名物探偵を略して名探偵だ。実際の推理力は迷探偵。早い話が毛利小五郎。弟のシャーロック君が頑張ってフォローに回ります。
推理力はからきしですが、行動力に関してはかなりのもの。捜査は足でするものだと言わんばかりに、今日も島を走り回る!弟のフォローがマジで大変、という事でもある。
「これは……事件ですよ!」
「事件だね。だから帰ろう!」
「駄目ですよ!事件が起こると解っているなら、未然に防ぐのが探偵の仕事。事件が起こった後に事件を解決して褒められるのは、事件が起こる事を知らなかつた探偵だけです!」
(5656! P263)
とはいえその「善性」は、島の住人にとって安心というか、癒しになっていることも事実。作中色んな人からの好感度が割と高いので、本当に危ないときはまぁなんとかなるだろう、という感じもする。
「フフフ……犯人はこの中に居ます!」
全く空気の読めぬ発言をする娘に、男達は一瞬顔を見合わせた。
「なんだこいつ……頭湧いてるのか?」
「だが、丁度いい……こいつを人質にすれば、何人か動き止められるんじゃねえか?」
男達は即座に決断すると、ニヤニヤと笑いながら懐の銃を取り出した。
「で?なんの犯人がこの中にいるって?」
「え? えーと……その……銃刀法違反……?」
(5656! P284)
ただ自分から鉄火場に突っ込んでいくので、目が離せないのも確かなのですが。
さて、彼女と言えば「がるぐる!」においての名推理は外せない。
名探偵の観察眼は、あらゆる先入観を無効化し、ただそこにあった「違和感」を、淡々と犯人に突きつける……!
犯人にとっても、その場にいた関係者の誰にとっても予想外のその「推理」は、ぜひ読んでいただきたいですね。そしてその「推理」を踏まえた上で出来れば、ぜひ「がるぐる!」を読み返していただきたい。「どんな気持ちでこのやり取りを……?」となる。なった。
……マジで名探偵の素質はあるのだよなぁ。「死斑誘致者」キー・ドリッキーとの絡みとかもみたいですね。二人とも善性だし、そうひどい事にはならないだろう。弟くんの胃は死ぬ。
こう書いているとやはり越佐大橋シリーズは良いよなぁという気分になり、そうなると必然新作「5656!2」の発売が待ち遠しくなってくるわけですが、まぁ気長に待ちましょうや。
月姫のリメイクも出たし、鵼の碑だってもうすぐでるらしいぜ。
あきらめなければいずれは出ることもあるだろうさ!