節足雑踏イケタライク

日々思った事や、書籍・映画・その他の感想なんかを呟きます。あまりマジメではございません。

関わりたくはないけれど、極めて魅力的な【厄ネタ】たち「デッドマウント・デスプレイ」

 

 

 

【あらすじ】

刮目せよ。「デュラララ!」の成田良悟が紡ぐ、新たな「異世界転生」をーー。それは「衝撃の第1話」から始まる物語。幾多の死地を踏み越えた最強の聖職者と、希代の資料術師の戦いは、新たな舞台『新宿』へと誘う。[レッドレイヴン][マンガ版バッカーノ!]の藤本新太と贈る衝撃の『転生』ノワール・ファンタジー堂々開幕!

 

1巻のカバー裏がこれなので、おそらくは公式に「大きなフック」となっている1話のアレについては触れない。アレだ。原作の成田さん、作画の藤本さんのTwitterにあるから見てきて。もしくは買って。

 

今回は「転生者」が此方で対峙する……作中呼称「厄ネタ」を主眼に置いて語ることにする。

 

作中での彼らの立場は未だ完全に定まった訳では無いが、ひとまずは「敵キャラ」だと考えておけば良いだろう。敵キャラが魅力的な作品は、面白い。そしてデッドマウント・デスプレイは、面白い。今日はそれだけでも覚えて帰ってほしい。

 

ちなみに私単行本派だから4巻収録回(~34)以降のネタバレは無いし、許さないよ。

 

 

 

レミングス

何処にでも現れる都市伝説、それがこの「レミングス」だ。何でも屋で、殺し、護衛、運び屋、誘拐、強盗、証拠隠滅、金の取り立てとどんな仕事でもこなす。現実離れした身体能力を持ち、サブマシンガンの弾丸を「浴びながら」現場にいた全員の首をへし折ったなんて話もあるくらい。

 

これだけ聞くと感情無き戦闘マシンのようだが、上司への報告の際は「肩こりが取れた」、「周囲の空気が晴れやかになった気がする」なんて細かな事や個人の印象もキチンと(?)報告する。

 

そして上司の命令には必ず従う。例え向こうからガンガン攻撃されても、電流流されても、「手出し無用」と言われた相手には手を出さないし、目の前であきらかな異常現象が起こっても仕事を優先する部下の鑑だ。4巻時点で単純な「強さ」のランキングでは最上位に位置するだろう。

 

 

 

・死神

4巻時点で最も「強い」厄ネタがレミングスなら、最も「謎の多い」厄ネタが死神だ。

 

明らかになっている情報は「2巻のレミングス大暴れを完全に把握出来ていたよ!」くらいしかない。「隠しカメラ」や「盗聴器」を考慮しなければこのシーンの誰かなんだろうが、このシーン色んな人がいるから実質ノーヒントだ。

 

俺は「警察の前でレミングスを撃とうかどうか迷っていたけれども店主に『まぁ落ち着け』と頬を撫でられて『ひゃうっ』てなっちゃったバニー店員」が怪しいと思っているが、まだ「露骨」な部類かなと思っているので判断を保留している。

 

……「ただのモブじゃないか」、「せめて名前のあるキャラクターだろう」だって?いや、こういうモブの方がヤバいんですよ。経験上。

 

 

 

・火吹き蟲

1巻で無認可の保育園が入ったビルを燃やした犯人として名が挙がり、ついに2巻で対峙する事になった「放火犯」だ。作中で最も早く「退場した」厄ネタだ。……こう書くとただのやられ役じゃないか……。此方での主人公の「家族」を燃やしていたり、色々と因縁のある相手だ。

 

メインウェポンは袖口に仕込んだ火炎放射器。変装を使い関係者になりすまし、壁紙の裏や天井・床下に火薬・発火装置を仕掛ける事で、本来あり得ない速さで建物を燃やし尽くす。どの様なタイミングでどう家が燃えるのか、その全てを把握している。「This world is a buggy program 」という文章を、犯行声明として現場に残した事から、マスコミに「火吹き蟲」と名付けられた。

 

作中では主人公に一瞬気圧されるも、主人公が「火を恐れた」事で自らの優位を確信。「てめぇらが例え何者だろうと 最後には火に屈するモノだからだ!」と炎の中で高らかに笑いつつ、この先の人生ずっと付き纏う事を宣言したところ……まぁ色々あって警察に捕まった。

 

ひとまずは登場したその巻でやられた厄ネタではあるが、「火にビビるなら俺は勝てる!」する辺りのインパクトは中々の物で…………

 

 

This  world  is   a      buggy     program

この世は 真っ当 に あらず


so    It      cries  but  for      the        frame 

 故に 炎に 恋 焦がれる

 

・“真”火吹き蟲

すまない。上の奴に関する文章は全部偽物の話なんだ。退場したのも偽物で、本物はまだピンピンしとる。偽火吹き蟲との違いはメッセージ。本物は「so It cries but for  the frame 」と続く。偽火吹き蟲はマスコミが報道した前半しか知らなかった様だ。

 

……こういう「本当の名前が解らないから『偽〇〇』と呼ぶしか無い」キャラクター、好き。扱いとしてはまぁ、悪いんだろうけど、メタ的に「これでこそ偽物!」て感じで素敵ですよね。真逆の「『偽〇〇』という呼称自体が『ソイツに偽物がいる』というネタバレになるので『偽〇〇』とは呼ばれない」も好きなんだけど。某残姉ちゃんとか。

 

さて偽火吹き蟲は事前の工作で建物を燃やしていたが、本物はどうなのか。

 

解らん。

 

解らんがいきなり発火する。上のメッセージにしたって、偽火吹き蟲を護送していたパトカーの屋根がいきなり文字の形に焦げて出現した。しかもその最中に警官が明らかにおかしな様子になっている事から、精神干渉もできるっぽい。

 

でも下の奴の話では「君のその力は魔法や超能力ではない」らしいです。マジで?4巻で少し主人公と話したりもしているけれど、果たしてその目的とは。

 

 

 

……精神干渉が出来て×××なら、バネ脚よりは『水』や罪歌の類かな?でも魔法や超能力ではない。むむ?……まぁオカルトである(無い)の判断は下の奴さんに従おう。彼の言動はそこなら信用できる。そこだけなら。

 

 

 

・怪人ソリティア

俺が「最も好きな」厄ネタ。本名は雪車村天哉。渾名が本名もじっただけですよ。警察の人がつけたこの渾名、本人は最近少し癖になってきたそうです。自称奇術師。けっこうなオジさん……見た目では40~50ってところかな?物語開始時点では警察に捕まってたけれど、色々あって逃げてきた。この人も魔法や超能力は使っていない、「技術の極致」で警察からすれば説明がつくレベルらしいです。嘘やん。ビルの屋上の出っ張った小屋みたいな部分丸々トランプに置換してたぞ。メインウェポンはトランプ。トランプ武術の使い手(マーシャルトランプアーツトランパー)。

 

3年前に「美術館にあった絵をエアコン・日差し除け付きのケースに入れてアルタ前に放置」する窃盗事件でデビュー、「東京都庁消失事件」、「ジャンボジェットテレポート事件」、「新宿御苑夢花火事件」などなど奇怪な犯行を繰り返し、「総理大臣誘拐事件」で一躍有名人となるがある日いきなり警察に出頭してきた。どこか落ち込んだ様子の彼の口から語られたその目的とは!

 

 「私には種も仕掛けもある だが私はこの世に『本物のファンタジー』があると信じている…!」

 

「私の犯罪はその本物の魔法使いや超能力者に対してのメッセージだよ!! 私の事を『同類』だと思って『本物』が接触してくれればそれは一つの証明だ!」

 

「この世界に 種も仕掛けもない幻想が存在するという事のね!」

 

 

 

……好き……。もうね、好き。こういう自分だけに理解できる熱意を持って、突飛な目的の為にひたすら突っ走るキャラクター、大好きなんですよ。

 

そしてこの怪人ソリティアの最も恐るべき点は「仲介人」である点。あだ名をつけた警察官曰く、無関係の厄ネタ達が自然に彼の所に集まってくるのだとか。実際彼は脱走直後に火吹き蟲と接触しているし、レミングスとも(少なくとも彼の視点では)偶然に出会うことになる。……その後戦闘に発展する辺り、「仲介人」というかただのトラブルメーカーなのではと思わなくもないが。一応火吹き蟲とはちょっとだけ協力できたけどさ。

 

さてこの怪人ソリティア、3~4巻でその人生の目的への第一歩をようやく歩み出したところである。彼の行く先がどんな道になるのか、ぜひこれからも楽しみにしていきたい。……だいぶ険しい事になりそうだけれど。端的に言ってだいぶ死にそう。

 

余談だがこのソリティアの犯行、中には殺人と思しきものもあるけれどそれは証拠不十分だそうで。確かに4巻までの印象では「愉快なおじさん」だから殺人はイメージにそぐわない、また偽火吹き蟲みたいな偽物の臭わせかなと思わなくはないのだけれど……。個人的な考えでは実際やっててもおかしくはないかな、と。よほどの逆鱗に触れたんだとは思うけれど、ただの「愉快なおじさん」だと思っていると痛い目を見るでしょうね。

 

 

・雑貨殿

厄ネタの厄度合いについては恐らく一番少ない……少ないかな?この物語のだいぶ深い【真相】を恐らく知ってるからな……。……「民衆にとっての本人の脅威度」が最も低いと思われる厄ネタ。なにせただのお店屋さんですから。

 

作中に登場するのは五代目。約100年前から存在する商家。現在は国家との「商談」により、拘置所内に店舗を開いている。この現状こそが彼の存在の異質さ、力の証明である。

 

売るものの値段は客の懐具合を見て決める。ただこの懐具合というのは財布の中身とは無関係で……要するにその売るものが、その客の「人生」にとって如何程の価値があるかによる。怪人ソリティアが買おうとした「ある情報」は3兆円(ソリティアがあらゆる手段で金儲けに走った場合6兆は稼ぐだろうと見積もり、その半額)だったけれども、他の人に売るのであれば数十円だという具合に、この価値本位制は徹底している。

 

価値本位制っていうとメイドインアビスみたいだが、まあそういう事。ソリティアもさすがにこれは買わなかった。3000万で「3分間のTV・ラジオの放送権(東京圏内か全国かは不明)」を買ったり、値段は解らんが飛行船数機を飛ばしたり、色々力は借りているけれど。金持ってるなソリティア。特許料でも取っているのか?

 

 さてこの雑貨殿のこだわりを見る限り、「解らないから払えない額を吹っ掛けた」なんてオチではなさそうだ。3兆払えば本当にその「情報」を渡していただろう。さてそれを知っているという事は……重要人物である事は間違いない。個人的には……「殿」の文字が気になる。神殿の殿……これは……1話読んできてほら早く!できればそのまま4巻まで読んで!

 

 

 

……こんな具合に魅力的な厄ネタが勢ぞろいした『デッドマウント・デスプレイ』。まだまだ魅力は色々あるというか、主人公陣営に結局一言も触れてないので、また次にやるかもしれない。

 

 

単行本には「異世界側」を舞台にした、成田先生の書下ろし小説もついてくるよ!「おさんぽ樹海」ロメルカ・リメルカさん好き。