「遊戯王」は奇妙なアニメだった。
奇妙な髪型の主人公が彼ほどではないにせよ落ち着いて考えてみればそれなりに奇妙な髪型の敵キャラと奇妙なルールのカードゲームで戦うアニメだった。
彼らは常に妙なテンションで「俺は負けたらここから飛び降りる!」だとか「ドロー!モンスターカード!(言うたびに相手が悲鳴を上げて攻撃を受ける)」だとか騒ぎ回り、まぁ、なんだか楽しそうではあった。
なんだか楽しそうだったので、そのうち彼らの真似をする子供も身近になった。少なくとも身内の環境においては、カードの価値は「どのキャラを真似できるか」で決まっていて、青眼やブラマジの価値は高く、当時の環境デッキ「三原式」の軸だろうとも、サイバーポッドやメタモルポットの価値は低かった。
最強サイクロンとか最強サンダー・ボルトとかもありましたね。長くなるので割愛しますが、あれはあれで健全な環境だった、と、言うつもりは無い。それだけは書いておく。
そのうちにアニメ続編の「GX」が始まった。融合が前提となり、攻撃力1000ちょっとのバニラモンスターばかりが収録される初期には、文句を言いながら離れた子供たちも多かったように思うが、アニメは相変わらず奇妙であった。
語尾が「〜ザウルス!」で骨格の一部に恐竜の化石を移植しているキャラクターが「割と常識人」ポジションだった、と言えば、大体のノリは伝わるでしょうか。
離れた子供たちの中には俺も含まれて、ここでしばらく遊戯王から目を離す事になる。いやアニメ後期、展開が割と暗くて……。
ただこのタイミングで目を離すと、次に目にするのが「5‘Ds」なんですよね。
「5‘Ds」の何が問題かと言うと、「バイクに乗りながらデュエルする事」…………ではもちろん無くて、「バイクに乗りながらデュエルする事に、もはや違和感を覚えなくなる事」ですね。
そりゃライディングデュエルなんだからバイクには乗るだろ。
奇妙なアニメは奇妙に面白く、我々に奇妙な思い出を多いに残してくれた。
高橋和希先生の、ご冥福をお祈りします。