節足雑踏イケタライク

日々思った事や、書籍・映画・その他の感想なんかを呟きます。あまりマジメではございません。

祝・ハリウッド!Bullet Train!「マリアビートル」

「マリアビートル」がハリウッドで映画化されるそうです。主演はブラピことブラッド・ピットで、監督は「ジョン・ウィック」や「デッドプール2」のデビッド・リーチ。タイトルはBullet Train。銃弾!列車!そして熟語として意味するのは「新幹線」!あつらえたようなタイトルだ!

 

まぁ、このご時世ハリウッドで「映画化が決定した」段階では全然安心できない、「安心して日本で観られるか」はまだまだわからないのですが、しかしおめでたい事ではある。このキャリアの人間が集まれば大丈夫だろとか吐かす奴は「幻の湖」を見るがいい。僕は遠慮しておきます。

 

個人的には日本で映画化された「グラスホッパー」と関連するシーンの扱いが気になる。特に先生はどうするんだよ。「やたら風格のある一般人」として出すか?それとも日本版の俳優(生田斗真)をそのまま起用?明確に別作品のキャラだから1人だけ日本人でも違和感はあるが、あっても良いな。

 

わからない事だらけではあるが、今日は「マリアビートル」の感想だ。ネタバレ注意!

 

 

あらすじ

 

幼い息子の仇討ちを企てる、酒びたりの元殺し屋、「木村」。優等生面の裏に悪魔のような心を隠し持つ中学生「王子」。闇社会の大物から密命を受けた、腕利きの二人組「蜜柑」と「檸檬」。とにかく運が悪く、気弱な殺し屋「天道虫」。疾走する東北新幹線の車内で、狙う者と狙われる者は交錯する――。小説は、ついにここまでやってきた。映画やマンガ、あらゆるジャンルのエンターテイメントを追い抜く、娯楽小説の到達点!(カバー裏より引用)

 

 

 

この新幹線には何人かの「裏社会」のキャラクターが乗り合わせてしまっている。それぞれの簡単な紹介と「目的」を簡単にまとめておこう。あとそれぞれのキャラクターの「特徴」も。

 

木村

 

引退した殺し屋だ。荒事からは身を引いて、普通に暮らしていたけれど、息子に再起不能とも言える大怪我をさせた奴が新幹線に乗るという情報を聞きつけ、復讐のために乗車した。つまり目的は後述するキャラクターである「王子」への復讐である。なお、アルコール中毒」であり、アルコールを飲む事が出来ない。アルコールを飲んでしまった時点でこのキャラクターは不可逆の変質をしてしまう。一応、治療の末、飲まなければ正気で行動可能とはなっているが。

 

檸檬と蜜柑

 

通称「果物」。現役の殺し屋コンビだ。非合法の仕事ならある程度なんでもやる。とある人物(とトランク)の護衛が今回の仕事で、該当人物を目的地まで連れて行くのが目的……だったのだが、ちょっと目を離した隙にソイツを殺されてしまった。あと、届けるはずだったトランクも無くしてしまった。

 

よって目的地までにトランクを発見し、尚且つ適当な「犯人」を仕立て上げて、依頼者の怒りを分散させなくてはならない。それでも無傷で終わるのは難しいだろうが、やらないよりはマシである。依頼者がマジでおっかないので、なり振り構ってはいられない。犯人が本当に「犯人」である必要はないのがポイントだ。

 

檸檬ややお調子者の機関車トーマスマニアで、蜜柑は冷静な読書家だ。息が合うとは思えない組み合わせで、事実、趣味の話は食い違いまくっているけれど、しかし仕事の腕は確か(初っ端から失敗しているのは多めに見てください。若干ネタバレ気味だが、『相手』も結構な強敵で……)で、信頼関係もそこそこ確かである。こういう風に言われるのは彼等、嫌がるだろうけれども。

 

目標が2つある、かなりハードなキャラクターだが、そこはコンビという事で協力して頑張っていただきたい。

 

七尾(天道虫)

 

最近頭角を表してきた殺し屋だ。腕前や評判は決して悪くない。彼の「目的」は、車内にあるとある荷物を奪う事。奪って、道中の上野駅で降りれば、それで成功だ。難なく「荷物」であるトランクを発見、確保して、あとは降りるだけ……という所で彼の固有スキルである「不運」が発動してしまう。果たして彼は、無事に荷物を持ったまま新幹線を降りる事が出来るのか。

 

彼だけ目標がクリア寸前で、まるで小学生のお使いみたいな難易度だが、「不運」がめちゃくちゃな性能をしているので、バランスは案外取れている。ネタバレ気味になるが、七尾さんの状況は加速度的に悪くなっていく。

 

……こんなスキル持ちなのに頭角を表せているあたり、凄い人、では、あるんですよ?ブラピはこの人みたい。主役って言えばまぁ、主役か。ブラピの雰囲気的には木村の方が合ってると思うんですが。

 

王子

 

唯一、裏社会とは無縁の中学生だ。

 

嘘じゃない。嘘じゃないが、非常に残酷な中学生だ。安い表現をすればサイコパスだ。自分の手を汚さず、周囲を操り、人の大切な物を傷つける。おねショタ物にはいて欲しくないですね。ショタが主導権を握る、どころの騒ぎではなくなるので。R18がR18Gになります。割とマジで。エロい事もね、多分してると思うんですけど、作中での明確な描写がG方向に寄ってるので。

 

木村に情報を敢えて流し、あっさりスタンガンで気絶、拘束すると、そのまま木村の息子を人質に、あれこれという事を聞かせまくる。一応の目的として木村を使って裏社会の大物を殺害する、というのはがあるが、そこまで、周りほど切羽詰ってはいない。1人だけエンジョイ勢である。あるいはその姿勢の違いが、何かに絡んでくるのかもしれない。

 

 

感想


……とりあえずこの辺りの登場人物が狭い新幹線の中でわちゃわちゃする群像劇、それが「マリアビートル」だ。一応単体で完結はしているけれども、出来れば同作者の「グラスホッパー」とか見てからの方が良いかも……。「知らない仮面ライダーが『見てた人からすれば多分エモいんだろうな』みたいな事をやっているシーン」が好きな人はそのまま観ても良いと思う。

 

俺はジオウのエターナルでこれやったんですけど、なかなか良い物ですね。どうも本当に「たまたま風が吹いただけ」らしいぞ、と知った際にはそんな事ある?となりましたが。

 

ハリウッドという事は、アクションシーンには期待して良かろう。堅気に囲まれた閉鎖空間という事もあって、あんまり銃は撃たない……サイレンサー(サプレッサー?)無しで撃つシーン確か無かったんじゃないかな?……けれども、肉弾格闘はそこそこ多いので。

 

なので、そこはもう読むなりあるいは映画化されたのを見てもらった方が早いと言うことで、敢えてアクション以外の部分を紹介するならば、まぁ「質問」のシーンになりますよね。

 

大人が子供に無邪気にされて困る質問、と言うのは何種類かあるんですが、そんな質問を上記の、王子が、しまくるシーンがあって。大体各登場人物に1回くらいあるんですけど、まぁ王子あんな奴だから、全然「無邪気な質問」では無いんですよね。それを装ってはいるけれども、実態としては“邪気マシマシの悪意乗せ〜隠し味に殺意を添えて〜”なんですよ。そんなノリで聞いてくるのが「どうして人を殺してはいけないのか」なんですが。

 

嫌ですよねー、コイツ自分は殺しまくってる上で無邪気にこれ聞いてくるんです。「このカードなんで禁止なの?」とニヤニヤしながら、カジュアルな身内の戦いで使ってくる奴の嫌らしさだ。相手が了承してるなら使うのは良い、けれど、その悪質さはしっかり把握しておけ!……悪質さのレベルが段違いなのは解っていますが。

 

悪質さの段違い度はその「行為」自体もそうだし、あるいは「答えにくさ」もそうでしょうね。聞かれたら皆さんどう答えます?道徳面で攻めます?法的解釈で攻めます?

 

まぁ、実際登場人物たちがどう答えるのかは読んでいただきたい所なんですが、この「答え」が共通していない所が、俺は好きで。こういう特定のワードでキャラクターが個別の反応返してくれるの、嬉しいじゃないですか。

 

DIOにとって「恐怖」は「克服する物」で「ほんのちっぽけな恐怖すら強者には要らない」物だけれども、ツェペリのおっさんにとっての「恐怖」は「我が物にする事で勇気となる物」なんですよ。こういう表現で「作者の思想がブレてー」とか言われるとキエーッ!ってなっちゃいますね。派生系の怒りとして、花京院がこの世のスタンド能力全部把握していたら逆におかしいだろうがッ!

 

……ただ、こういう「沢山の答えが作中で提示される」の、若干嫌になる事も多くて……「明らかに作者の持論である答えが優遇されている」と「あー……」ってなっちゃうんですよねー……。キレはしないけれど。

 

そりゃあね?解りますよ?

 

答えがいっぱいある問題を取り上げた、取り上げたなら適当な落とし所で登場人物あるいは読者を「納得」させなければいけない、「納得」させるに足る考えとして描写できるのは自論である、みたいな流れで、ちょっと他の考えより贔屓してしまうのは。キレイに話を纏める上である程度は必要なことだと思いますし。

 

ただねー、なんだろう。子供の頃、親と一緒に服屋に行った時の事を思い出してしまう。

 

「服AとBどちらが良い?」

「A!」

「Bの方が良くない?」

「A!」

「B、よく履いてるあのズボンと合わせるとお洒落だよ」

「A!」

「あ、見て。これ(C)良くない?」

 

……ほぼ毎回のやり取りでしたからねー……。俺のセンスが余りにアレだったのか、あるいは親のセンスの問題か。今となってはどちらが悪かったのか解りませんが。……半々かな。

 

で、「マリアビートル」に関しても、最終的に王子が「納得は出来ないまでも反論は出来ない答え」みたいなものは提示されて、その尺が他よりちょっと長い、みたいな部分はあるんですよ。あるんだけど、それはそこまで気にはならなかった。

 

その部分、登場人物が他より多くて。それぞれの反応を描写すればそれは他より少しは長くなるだろうし、何より王子が反論に詰まった後に、その答えを提示した人物……とは別の人物が、言うんですよ。

 

「今の(キャラクター)の答えで、満足か?俺からすれば、人を殺すも殺さないも自分の考え次第だからな、(キャラクター)の言葉に納得するわけではない。ただ、それなりに説得力はあったかもしれねえぞ。何か言ったらどうだ」(P 528)

 

……この一声だけで、随分気にならなくなりましたね。人によっては言い訳臭く聞こえるかもしれないけれど、俺にはある種の誠意のように思えました。好き嫌いの別れそうな答えですしね。ネタバレ気味なので色を変えますが、倫理とか道徳とかそんなに関係の無い答えです。気になる人はぜひに。

 

……感想を書くために読み返していたら、やっぱり面白いと思ったので、映画も観るんじゃねえかなと思います。その時は感想も書きましょう。流石にコロナは収まってるだろ。収まってると良いな。ブログも、続いていれば。細々と。