節足雑踏イケタライク

日々思った事や、書籍・映画・その他の感想なんかを呟きます。あまりマジメではございません。

鰻の白焼きが喰いてえ、と、思うだけ

鰻の大量乱獲が懸念され始めたのは何時頃からか。

 

土用の丑の日が近づくと決まってネットで騒がれる。曰く「もはや絶滅寸前だ」、「そもそも『土用の丑』は平賀源内のステマに過ぎない」、「それにしても本来『う』の付く食べ物ならなんでも良いんだ」。そんなやり取りを毎年のように見かける。その割に大衆店なんかでも案外お手頃な値段で鰻の取引がなされている。

 

俺はどちらかと言えば「絶滅が心配」派の人間で、ここ数年は食わない年の方が「多い」。ここで「食っていない」と書けないのは、実家に帰省した際に用意されている事があるからだ。「お店で売られているのを買わない」までは意義を認める事が出来る。しかし「買われて家庭でご飯に盛られた」物を拒めば、ご飯一杯と鰻が無駄になるだけである。あと多分結局怒られて食う羽目になる。1発くらいは殴られるかもしれない。善意と厚意の物ですから。

 

ちなみに雑談で家族に「どうやら絶滅寸前らしい」とは話した事があると思う。忘れているのか、響かなかったのか、あるいは、「もうすぐ食えなく(類:手が届かなく)なりそうなら今食っとこう」という考えなのか。家族がこのどれに該当するのかを追求する気は、今の所ない。いつの世も資源関係はリアル魔神柱争奪戦ですね本当に。

 

そんな人間なのでそこまで鰻について偉そうな講釈を出来る立場では無いのだけれど、しかし自分の金では買ってないという一点に賭け、もはや恐らく敵わないだろう望みを一つ、ここに記したい。

 

……白焼きが喰いてえ……。

 

アレは……イギリスの食文化を紹介するやる夫スレだったか……。曖昧な記憶ではあるが、英国名物「鰻のゼリー寄せ」に苦言を呈されたイギリス人が、日本人に向かって「お前たちの蒲焼きもタレの味しかしないだろう」と言って、日本人が「コイツに白焼きを食わせてやろう」と決意する、みたいな……。そういうやり取りが何かであって、それを見てからずっと白焼きを食ってみたかった。ゼリー寄せもね、ちゃんと作ればアレ要するに煮凝りだから、不味くは無いそうなんですが。

 

……だが家で出て来るのはタレ付きのパック入りばかり……自分で金を稼ぐようになってからはすっかり絶滅が心配されるようになっていて……結局食べる事なく今日に至る。

 

「買われて盛られてたら食べる」スタンスの人間が、タレ派の家庭で白焼きを食べるのはとても難しい。

 

第一に思い浮かぶ解法として「正直に言う」と言うのがある。「俺、白焼きっていうの食べてみたいんだよね」と、言う。ではコレをしたらどうなるか。

 

「いやー、俺白焼きって言うの食べてみたいんだよね。鰻の絶滅が心配で自分の金では買わない俺だけれども、白焼きっていうの食べてみたいんだよね。金は出さないけどね。ああ、買ってきてくれたの?ありがとう。いやあ絶滅が心配だけれどもまぁ買われて盛られちゃったらね、白焼き前から食べたかったし。俺は金出してないしね、うん、いただきます」

 

殴られる事になんの異議も無い。なんなら自分で自分の頬を叩きながら言うからね。

 

「いやー、俺白焼きって言うの食べてみたいんだよね。鰻の絶滅が心配で⭐︎自分の金では買わない⭐︎俺だけれども、白焼きっていうの食べてみたいんだよね⭐︎金は出さないけどね⭐︎ああ、買ってきてくれたの?ありがとう⭐︎いやあ絶滅が心配だけれども⭐︎まぁ買われて盛られちゃったらね⭐︎白焼き前から食べたかったし⭐︎俺は金出してないしね⭐︎うん、いただきます⭐︎」

 

(⭐︎……タイミングよく叩こう!)

 

こんなのを家族に見られたら、頭か心の病院だよ。診察の後に案外買ってもらえるかもしれませんけれども。嫌だよ。

 

これを踏まえた無難な落とし所として、「正直に言った上で差額分を出す」というのがある。追加料金、手間賃を算出し、俺だけを白焼きにしてもらう。

 

ただ家族みんなで鰻を囲んで団欒だ、という場面で俺だけが白焼き、というのはどうでしょう。なんか俺だけ無理して通ぶってる感じがしませんか。1人だけ違うの食うのはな。しかも俺だけ高いとなるとな。相当に居心地が悪かろうな。

 

というか、それは結局「自分の意思でウナギを買っている」訳で、それをやるならなんか良い感じの店に1人で行くよ。家族には多分行った事を黙ってるよ。それをやるには現状の鰻に関する諸問題を考えると、食事に邪魔な程度の罪悪感が生まれるので、どうしようという話なんだコレは。

 

……まぁ現実的には結局この「自分で買って食う」が一番簡単なんですが。罪悪感の問題は現状どうしようも無い。

 

解決する方法があるとするならば、普通に鰻を食える、絶滅の心配が無くなるような環境となる事なんですが、コレは俺1人の力ではどうにもならん。あと現状の流れを見るに、ちょっと……だいぶ……かなり……うーん。

 

いつか食える日を夢見ていますが、まぁ、夢のまま終わるかもしれませんね。

 

あと、夢見る期間がかなり長くて、ハードルがかなり上がっている自覚があるので、そういう意味でも夢のままの方が良いかもしれませんね。

 

個人的に山椒のポテンシャルはもっと評価されるべきだと思う。君は鰻専用の薬味では終わらない。今から別の相方を探すのも良いだろう。鰻くんはね、もう、その、良い子なんだけど将来性が。